今月の1点 Monthly Pickup 6月
 
 

        
        ZIPANGU 日本の昔話による10のカリカチュア

               10 かぐや姫
 


柄澤 齊(からさわ・ひとし 1950〜)

1999(平成11)年 木口木版・紙/額装 13.7×11.6cm



柄澤 齊《10 かぐや姫》1999年
 

艶やかな竹の切り口におさまり、右手に持った三日月に照らされた顔は、タイトルの「かぐや姫」とはほど遠いイメージの西洋風な顔立ちをしています。彼女の右からは、体に星をちりばめたツバメらしき鳥が覗き込んでいます。その左脇に抱えるのは地球でしょうか。物語の設定では、体は三寸(約9cm)ほどのかぐや姫ですが、頭には後光がさし、月や地球を軽々と扱う様は、まるで巨大な力で宇宙を支配する神のようにも見えます。
この作品は、日本の昔話を西洋の名画をもとにしてカリカチュアとした『ZIPANGU(ジパング)』シリーズの中の一つです。カリカチュアとは、特徴を大げさに強調して描いた風刺画や戯画と訳されます。
この「かぐや姫」のもととなった絵画は、おそらくサンドロ・ボッティチェリの「柘榴(ざくろ)の聖母」でしょう。聖母マリアのふわりと包みこむような腕は竹の器に、キリストの受難をあらわす柘榴は地球に変わりましたが、幼子イエスの深遠な眼差しとその横に置かれた手、不自然な角度の足は、「柘榴の聖母」に描かれたイエスそのものです。日本の昔話を西洋の名画を借りて謎解きのようにした、面白みのあふれる作品です。

(美術館 K.I )

<略歴 >

1950年、栃木県日光市に生まれる。71年に創形美術学校版画科入学し、日和崎尊夫に木口木版画を学ぶ。73年、創形美術学校版画科卒業、同校研究科加藤清美教室に学ぶ。74年、創形美術学校研究科版画課程修了。75年、日本版画協会会員となる。77年に城所祥、日和崎尊夫、山本進、栗田政裕と「鑿の会」結成。79年、「鑿の会」に小林敬生を加えて、年刊同人誌『鑿』を始める。81年、幻想画家のグループ「幻視の森」に参加。翌年解散。北川健次、高柳誠、時里二郎と年刊同人誌『容器』を始める。91年、『柄澤齊木口木版画集 1971-1991』(阿部出版)刊行。94年、プライヴェートプレス梓丁室を開設、エッセイ集『銀河の棺』(小沢書店)刊行。96年、『柄澤齊木口木版画集 1971-1996』(阿部出版)刊行。2002年、処女小説「ロンド」出版。2002年から04年にかけて「目展」(高島屋巡回)に参加。06年、栃木県立美術館/神奈川県立近代美術館鎌倉館で回顧展開催。