今月の1点 Monthly Pickup 12月
 
 

        
                    トスカーナ


佐々木 壮六 (ささき そうろく) ( 1936‐2000 )作

1995(平成7)年、油彩・キャンバス 112.0×145.5センチ
個人蔵


《トスカーナ》
 

 2012年の年頭を飾る「詩情の画家 佐々木壮六展」(2012年1月7日〜2月26日)からの1点です。藤沢市善行に居を構えた佐々木(1936−2000)は抒情的な作風で知られる油彩画家で欧州に取材した風景画や人物画を多く残しました。この静かな風景画も州都フィレンツェを擁す北イタリア、トスカーナの豊かな土地をテーマにしています。ルネサンス文化を育んだ濃厚な歴史的風土の遠い記憶と、現在に続く人々の暮らしの気配が淡い陰影の中に溶け込み、全体が一枚のフレスコ画のようです。手前から中景、後景に続くのは葡萄やオリーブの果樹園でしょうか、矩形の土地の広がりがそれぞれ微妙な色調の変化を見せて地層のように積み重なり、構図を引き締めていることに気が付きます。さらに遠望すると地平に街並みが浮かび上がり、そこに垂直に立ち上がる鐘楼や塔がリズミカルなアクセントをつけています。これらが柔らかな色彩の調和を内側から支えているようです。前景右方の三本の高い樹木は松か杉の木でしょう。ヒトの姿にも見える個性的な形とグレイの色調が梢を吹き抜ける微風のように絵全体に静かに響いていくのを感じることができるのではないでしょうか。このように、実景に取材した風景が、少しずつですが抽象的なつよさ獲得していく過程が晩年期の佐々木壮六の絵の見どころではないかと思います。

(美術館 M.O )

< 略歴 >
1936年 大阪に生まれる。 1961年 京都市立美術大学洋画科卒業。 1970年 第14回シェル美術賞展1等受賞。 1983年 第1回上野の森美術館絵画大賞展特別優秀賞受賞。 1993年 フィレンツェ賞展永久顧問となる。「佐々木壮六画集」求龍堂1997年。2000年逝去