今月の1点 Monthly Pickup 1月
 
 

        
                「 優しい雨 」


田中 みぎわ (たなか みぎわ) ( 1974‐   )作

2007(平成19)年、墨・胡粉、雲肌麻紙
150.0×720.0センチメートル
  個人蔵


優しい雨
 

                                   撮影:末正真礼生

 作者は「天と地」あるいは「天と水」が見わたせる場所に立ってそこに繰りひろげられる天象につつまれ、観察し、スケッチにとどめます。
 それは激しい雲の動きであり、雲が齎(もたら)す雨であり、雲の切れ目を走る光、また、雲を染める夕焼けであったりもします。
 そうして天空の、風雨の、太陽の、ときには大海原や流れゆく水、とどまる水の声なき声を聴き、不定形であるそれらの事象の一瞬の相貌を墨によって白い紙の上にかたちづくります。
 しかしその行為は自然現象の定着化や写しではなく、その声を聴いた田中みぎわさんによる創出といってよいかもしれません。しかもそこに創りだされた「気象」は限りある画面のなかにとどまることなく私たちの眼前に拡がり、作品の前に立つ者を実際の自然のようにつつみこんでゆくような力をかんじさせます。
 この作品は、2月14日まで美術館で開催している企画展 「PIANISSIMO
田中みぎわ/留守玲展―冬の浜辺から―」で展示しています。

(美術館 N.Y )

< 略歴 >
1974(昭和49)年生まれ。東京藝術大学在学中に安宅賞を受賞。同校絵画科日本画専攻卒業後、同校大学院修士課程美術研究科日本画専攻を修了。
1999(平成11)年から一年半、沖縄県石垣島に、2003(平成15)年から三年間、熊本県菊池市の故祖父母宅に居住し、制作。その後、自身の出身地・東京都武蔵野市を拠点とし、2008(平成20)より茅ヶ崎市に移っている。
個展、グループ展にて作品を発表するほか、「VOCA展」などのコンクール展にも参加。また、「墨戯―魅惑の水墨画」(2002年、岡山県立美術館)や「現代の水墨画 水墨表現の現在地点」(2009年、富山県水墨美術館・練馬区立美術館)などの企画展にも作品が出品されている。