今月の1点 Monthly Pickup 7月
 
 

                 
            「 機関車の群れ(対話) 」


鶴田 猛 (つるた たけし) ( 1923‐2008 )作

1988年、油彩・キャンバス、
162.0センチ×130.5センチ


機関車の群れ(対話)
 

黄土色の大地、黄土色の砂風のなかを果てなく走る機関車。旧満州(中国東北地区)で南満州鉄道の機関士として過ごした日々は、画家の心に永遠に消えない風景を刻み込みました。
鶴田猛作品の大きな特徴である、画面全体を支配するイエローオーカー(黄土色)とアクセントのバーミリオン(朱色)、そしてデフォルメされ、どこか生き物のようなユニークな形態で描かれた機関車。ここでは、外形をさらに簡略化された機関車たちが、群れから外れて静かに向き合う二両の機関車を尻目に、ひしめき合いながら画面中央を横切っています。
機関車は人の手によって作られた運送の道具ですが、画中のそれはまるで人そのもののようにも見えます。個人に無関心な人の群れ、群れとともに押し流されていく時間、ふと立ち止まった時に交わす誰かとの会話。
画家の心の地平を走り続ける機関車は、人や社会、或いは画家自身と分かちがたく結びつき、さまざまなメッセージを積んで私たちのもとへとやって来ます。
美術館では、現在「第26回茅ヶ崎美術家協会展」を開催中(7/18まで)。協会の相談役を務める鶴田猛も一点出品しています。

(美術館 J.K )

< 略歴 >
1923年、現在の茅ヶ崎市円蔵に生まれる。38年上京、翌年国鉄に入る。41年旧満州にて満鉄に入社、終戦による満鉄閉鎖まで機関士として働く。46年日本へ引き揚げ。翌年再び国鉄に入る(77年まで)。この頃から本格的に制作を開始。57年一陽展に初入選、以後同展に出品(59年青麦賞受賞、64年会員推挙、87年野間賞受賞、88年委員就任)。59年安井賞候補新人展出品、75年紺綬褒章受章、88年茅ヶ崎美術家協会会長就任(98年まで)。2002年茅ヶ崎市美術館企画展「汽車ポッポの詩―鶴田猛展」開催。現在、茅ヶ崎のアトリエで制作活動を続けている。