今月の1点 Monthly Pickup 12月
 
 

「ボルテーラ」
三橋 英子 (みつはし ひでこ) ( 1923-  )作

1998年, 油彩・キャンバス , 53.0cm× 65.2cm



  明るく軽やかな色彩で描かれた石造りの壁が、清々しく晴れた日の、古い異国の地の光に満ちた空気を感じさせる。その中央にぱくりと開いた狭き門は、訪れた者を歓迎も拒否もせず、ただ静かに、あるがままにある。
  ボルテーラは、イタリアのトスカーナにある古い町の一つ。紀元前から都市国家として繁栄し、今もその長い歴史を偲ばせる数々の建造物が残されている。
  静物、抽象、シュールレアリスム的表現と変遷を辿った画家が次に選んだのは、こうした土地で出合う風景との直接的な対話だった。
  その場に立ったであろう画家と同じ目線で見る画中の風景は、鑑賞者を一瞬で古都の入口へと連れて行く。門の向こうに続いていく道の先には、何が待ち受けているだろうか。
( J・K )

< 三橋 英子 ( みつはし ひでこ )略歴 >
1923年朝鮮京城(現・韓国ソウル)に生まれ、釜山に育つ。終戦後日本へ、岡山県に転居。53年第12回創元会展に初入選、新人賞受賞。また同年より三回連続で日展に出品、入選。画家・三橋兄弟治と結婚、茅ヶ崎に転居。60年水彩連盟会員推挙(72年退会)。64年欧州を巡遊、翌年帰国。以後たびたび渡欧、スペインを主に取材旅行を重ねる。72年神奈川女流美術協会春季展に出品、神奈川県立近代美術館賞受賞。80年現代日本のマニエリスム展に招待出品。82年神奈川県立近代美術館、池田20世紀美術館に作品が収蔵される。その他、兄弟治との二人展及び個展等多数開催。