今月の1点 Monthly Pickup 10月
 
 

「 海岸風景 」
萬 鐵五郎 (よろず てつごろう) ( 1885-1927 )作

1926年, 油彩・キャンバス, 33.4cm× 45.5cm



  大正15年夏の一日。砂丘には2艘(そう)のテンマ舟が海辺に舳先(へさき)をむけて横たわる。中央に描かれた舟の影は、時まさに午前8〜9時ごろを示している。その向こうの小舟の舷(ふなべり)には漁師が二人。これから海にでるのだろうか、はたまた早朝の漁から戻ったばかりか。画面の上方、真鶴半島越しにかすかに富士の威容が浮かぶ。全体の色調は薄い青とベージュ。浜辺で筆をとる作者の頬を爽風が掠(かす)めて…
  萬が病気療養のため、東京・小石川からこの茅ヶ崎に居を移したのは大正8年3月。以後、彼は茅ヶ崎の松林と潮騒のざわめき、そして海からのやわらかい風をこよなく愛したという。この絵の描かれた翌年5月に42歳で亡くなるが、それは前年暮れに急逝した娘登美子の跡を追うかのようであった。
(KA)


< 萬 鐵五郎 (よろず てつごろう)略歴 >
 岩手県和賀郡東和町土沢生まれ。1907年、東京美術学校西洋画科に首位で入学。1912年、同卒業。卒業制作の<裸体美人>はわが国における後期印象派受容の先駆的作品とされる。同年9月、岸田劉生らのフュウザン会に参加。1917年、キュビスムへの傾斜を示す<もたれて立つ人>が衆目を集めた。1919年に茅ヶ崎に転居。1927年に歿するまでの間、<水着姿>をはじめ多くの茅ヶ崎に題材を持つ絵を残した。