今月の1点 Monthly Pickup 7月
 
 

「 機関車(A)」
鶴田 猛 (つるた たけし) ( 1923-2008 )作

1959年, 油彩・キャンバス, 89.3cm×130.3cm



  4月好日。美術館に白髪バンダナのご老人がひょっこり現れた。ロビーのソファーにドッカと腰を下ろすや、ギョロリと当方をひと睨み。そしてニヤリと笑い、「汽車ポッポの鶴田です」とのこと。4月1日の着任以来、茅ヶ崎ゆかりの画家の名前を頭に刻み込む日々であったが、「汽車ポッポ」の一言で即了解。おそらく市民の皆さんも、「汽車ポッポ」といえばすぐさま、氏の、あの特徴的な風貌を想い浮かべられるに違いない。
  その鶴田氏のいわば出世作が、「機関車(A)」をはじめとする黒い蒸気機関車の一群である。若き日に南満州鉄道の機関士として、広大な大陸の草原を黒煙をなびかせて疾駆した爽快な想い、それこそが氏のエネルギーの源泉であり、それをメいっぱい、毫(ごう)の衒(てら)いもなく画面にぶつけた結果が、この作品にほかならない。