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今月の1点 Monthly Pickup 6月

《 冥漠 -翔- 》 岩本和子 ( いわもと・かずこ 1935~ )

1991(平成3)年 油彩・キャンバス 縦130.5×横192.0(cm)《茅ヶ崎市美術館所蔵》

 

2015_06gatsu_400.jpg作品を前にした瞬間、ある言葉が思い浮かんだ。 「輪廻」。その印象は、画面中央に大きく描かれ、作品の主要なモチーフになっている円環状の形態によるもの、だけとは限らない。雲や煙を思わせる流動的な色彩群の塊に、時間の経過を読み解くことはたやすいであろう。丸い形は太陽や月、あるいは地球を含めた天体の惑星であろうか。回転し、地上に現れ、そして消えていく。あたかも人間の運命そのもののように、遙か昔から繰り返される生命の営みを感じさせる。 作者の画歴を知ると、そうした解釈はあながち見当違いなものではないことに気づかされる。岩本和子の祖父は、東南アジアを舞台にして活躍した社会改革家で、孫文とも親交があったという。彼が客死したタイを中心に1969(昭和44)年スケッチ旅行を行い、現地で目の当たりにした、仏教などの宗教を信じてひたむきに生きる人々の姿に感動、その後インド、シルクロードに取材を重ねた。古い遺跡や昔と変わらない暮らしぶりに追憶に似た感情を覚えたという。それは一人の人間に留まる意識ではなく、すべての人類に通じる悠久の想いではないだろうか。作者は自分の特徴的な色彩として朱色を用い、世界の根源的な在り方を追求した。 しかし、近年新たな変化が作品に生じている。いわば自家薬籠中の物とした、朱色による表現をあえて禁じ、今まで使ってこなかった色彩に挑戦、自らのテーマのさらなる深化、あるいは飛躍を遂げようとしている。その試みに、画家として貪欲なまでに自己の内面を追求する、厳しい一面を見る思いである。 岩本の最新作は7月11日まで、第33回茅ヶ崎美術家協会展で見ることが出来る。

 ( 美術館 T.T )

この作家の作品は共催展「第33回 茅ヶ崎美術家協会展 [会期:2015年6月16日(火)~2015年7月11日(土)]に展示されています。

<略歴 >

岩本和子 (いわもと・かずこ) [1935(昭和10)年生まれ]
1935(昭和10)年、東京都世田谷区に生まれる。1939年神奈川県高座郡茅ヶ崎町(現・茅ヶ崎市)中海岸に転居。15歳に三橋兄弟治に水彩画を、次いで寺田春弌にデッサンと油彩画を学ぶ。東京藝術大学絵画科油画専攻(伊藤廉教室)卒業後、国画会展に出品するも公募展に疑問を感じ、以後個展を中心に作品を発表する。1969年社会革命家で孫文とも親交があった祖父の没地タイを中心に東南アジアに取材旅行。1972年にインド各地に取材旅行。この旅行がきっかけで以後たびたびインドを訪問する。シルクロードにも旅し、それらの取材で得た着想が「冥漠シリーズ」などに結実している。茅ヶ崎美術家協会でも活躍。地域の美術文化の振興に尽くしている。
2005年「― 祈りの空間 ― 岩本和子展」(茅ヶ崎市美術館)

 

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