人の手のひらの上で小さな美術館が立ち上がるような体験を贈りたい
コロナ禍に見舞われた頃、全国のミュージアムが休館を余儀なくされ、茅ヶ崎市美術館も人々を美術館に迎え入れることができないという時間を過ごしました。これまでに経験のない時間の中で気づいたのは、そもそも美術館に「来られない人/来ない人」の存在でした。
この気づきをきっかけに「人の手のひらの上で小さな美術館が立ち上がるような体験を贈ることができないか」という想いを、建築家・デザイナーの齋藤名穂さんに相談し、スタートしたのが本プロジェクト「トラベリング ミュージアム」です。
美術館の空気感を人の手に届けることを目指したこのプロジェクトのため、昨夏、来館者の皆さんに〈あなたにとっての美術館での1日〉を絵はがきにして教えてもらうというリサーチを実施しました。皆さんのご協力のもと集まった600枚にもおよぶ絵はがきから齋藤名穂さんがデザインをおこし、地域の七宝焼、ガラス、木の職人とともに一つひとつ創り上げた素材の異なる3つのミュージアム・ギフトが完成しました。
茅ヶ崎市美術館として、初の試みとなるミュージアム・ギフト「トラベリング ミュージアム」。美術館の空気感があなたのもとへ、そして、誰かの手に届きますように。
◎プレスリリース
【1セット 10,000円(税抜)】
各種ブックレット、オブジェクト解説文、サイン&エディションNo. 入り
「七宝焼のオブジェクト」 ×限定17セット
「木のオブジェクト」 ×限定17セット
「ガラスのオブジェクト」 (非売品)
※ブックレットのみ 300円(税抜)
齋藤名穂 SAITO Nao
東京都生まれ、在住。建築家、デザイナー。UNI DESIGN主宰。早稲田大学理工学部建築学科卒業後、フィンランドへ留学。ヘルシンキ芸術デザイン大学空間デザイン修士課程修了。「建築空間を、五感や個人の空間の記憶を頼りにデザインする」をテーマに、見えない人と見える人が一緒に読む地図や場所の記憶を引き継ぐ家具のデザイン、展覧会の会場構成、美術館空間・作品を五感で鑑賞するツールのデザインなど、幅広いプロジェクトを手がける。
七宝焼のオブジェクト
デザイン:齋藤名穂 制作:湘南七宝燒(神奈川・茅ヶ崎市)
美術館へつづく緑豊かな坂道を、軽やかに舞う蝶々がモチーフ。銅板に白の琺瑯釉薬をかけ、羽の片面には茅ヶ崎の浜辺の砂を振りかけて焼成している。釉薬の薄い部分は銅が琺瑯と反応し、波打ち際を彷彿とさせる緑青色となっている。湘南七宝焼の技術と茅ヶ崎の素材そのものが持つ美しさをシンプルな蝶の形で表現。
〈ポイント〉
・異なる色合いや手触りを両面楽しめるデザイン。
・海で拾った石など、他のモノと組み合わせて置くことで様々な角度から楽しめる。
・人の手の体温がじんわり伝わるオブジェクト。
湘南七宝燒について
銀箔を使った伝統的な技法を得意とし、丁寧な手仕事と現代的なスタイルを融合させ、新たな七宝焼きを創り出す画期的な茅ヶ崎の工房。https://www.shonanshippoyaki.com
木のオブジェクト
デザイン:齋藤名穂 制作:東京チェンソーズ(東京・檜原村)
美術館の地下と地上をつなぐ特徴的な階段をはじめ、茅ヶ崎市美術館にある様々な階段がモチーフ。自然豊かな美術館周辺の環境を想像させる木が素材として使われている。プラタナスの柔らかな木肌とカーブを描く滑らかな表皮が特徴で、1つの形から2つの形が現れることで空間的な拡がりをみせる。
〈ポイント〉
・美術館の自然豊かな周辺環境を素材に活かしたデザイン。
・分かれる2つのオブジェクトの配置によって見えてくる空間の拡がり。
・微かに揺れ動く様子が楽しめるオブジェクト。
東京チェンソーズについて
森を整備・管理するほか、根株や枝・葉など木を1本まるごと活かす取り組みで、森と人の新たな関係づくりを試みる檜原村の林業会社。https://tokyo-chainsaws.jp
ガラスのオブジェクト
デザイン:齋藤名穂 制作:ぐり工房(神奈川・寒川町)
エントランスの大きなガラス面や展示室の天窓から入ってくる光など、茅ヶ崎市美術館にそそぐ様々な光がモチーフ。幾層にも重ねられたガラス板の間には、差し込む光の形や美術館の建物の模様を写し取ったフロッタージュのフィルムが挟み込まれている。
〈ポイント〉
・建物の素材感をそのまま活かしたデザイン。
・透き通るガラスが重なり光の層が楽しめる。
・置く場所や光の当たり具合により見え方が変わるオブジェクト。
ぐり工房について
卓上バーナーでガラス棒を溶かして加工する酸素バーナーワークという技法で、アクセサリーやガラス工芸品を制作している寒川町の可愛らしい工房。https://www.guridrops.net
限定100部!ブックレットを受付にて販売
著:齋藤名穂 編集・発行:茅ヶ崎市美術館
2022年夏、茅ヶ崎市美術館では、来館者の皆さんに〈あなたにとっての美術館での一日〉を絵はがきにして教えてもらいました。集まった600枚におよぶ絵はがきをもとに、齋藤名穂さんが“見えないカタチ”をイラストと言葉でつづった、美術館の空間をめぐる小さな絵本。
1冊300円(税抜)