
地域に根ざした建築設計で知られる山口 洋一郎の「茅ヶ崎市美術館」は、鳥が翼を広げたような屋根が特徴的です。この湘南の軽やかな空気をまとう当館を舞台に、場の特性を活かす“サイト・スペシフィックな芸術”として、5つの珠玉の「美術館建築」を取り上げます。
石見地方特産の石州瓦で建物全体を覆い、釉薬の違いにより玉虫色の建築を創り上げた内藤 廣「島根県芸術文化センター」。広島の造船技術を活用した可動展示室を中心に、所蔵作品から着想を得たエミール・ガレの庭、10棟のヴィラ、レストランからなる海辺にたたずむ坂 茂「下瀬美術館」。瀬戸内の島につくられた銅製錬所の遺構を活用し、周囲の丹念なリサーチのもと、風・水・太陽を“動く素材”として扱い、自然エネルギーによる循環型建築を創り出した三分一 博志「犬島精錬所美術館」。環境・アート・建築が一体となり、上部に大きく開けた穴からうつろう自然を採り込む唯一無二の空間で知られる西沢 立衛「豊島美術館」。加えて、国内の建築資料のアーカイブを行う文化庁国立近現代建築資料館が所蔵する3つの美術館、坂倉 準三「神奈川県立近代美術館」、ル・コルビュジエ「国立西洋美術館」、高橋 靗一※+第一工房「群馬県立館林美術館」のオリジナル図面も公開します。
本展では、模型や設計図面に加え、初期アイデアスケッチ、建築素材、実験過程がわかる資料を通じ、建築家の思考を辿るとともに、その場所にその美術館がある意味を探っていきます。
※読み方:ていいち 靗一の「靗」は青偏に光。以下全て同様。

建築:山口 洋一郎
(写真:洋建築企画)

建築:内藤 廣
(写真:内藤廣建築設計事務所)

建築:坂 茂
(写真:平井 広行)

企画運営:公益財団法人 福武財団
建築:三分一 博志
アート: 柳 幸典
(写真:阿野 太一)

企画運営:公益財団法人 福武財団
建築:西沢 立衛
アート: 内藤 礼
(写真:鈴木 研一)

建築:坂倉 準三
(所蔵:文化庁国立近現代建築資料館)
展覧会名 | 美術館建築―アートと建築が包み合うとき Art Museum Architecture: Where Art and Architecture Harmonize |
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会期 | 2025年4月1日(火)-6月8日(日) |
休館日 | 月曜日(ただし、5月5日は開館)、5月7日(水) |
開館時間 | 10:00-17:00(入館は16:30まで) |
料金 | 一般800(700)円 大学生600(500)円 市内在住65歳以上400(300)円 ※高校生以下、障がい者およびその介護者は無料 ※( )内は20名以上の団体料金 |
会場 | 茅ヶ崎市美術館 |
主催 | 公益財団法人茅ヶ崎市文化・スポーツ振興財団 |
共催 | 茅ヶ崎市、文化庁国立近現代建築資料館 |
協賛 | 鹿島建設株式会社、丸井産業株式会社、大成建設株式会社 |
協力 | WHAT MUSEUM 建築倉庫、株式会社シラヤマ |
展覧会チラシ | 下記からPDF形式でダウンロードできます 展覧会チラシ |
関連イベント
建築家による講演会
本展出展の建築家によるスペシャルな講演会です。
① 内藤 廣 [日時]4月26日(土) 14:00-15:30[会場]A
② 西沢 立衛 [日時]5月17日(土) 14:00-15:30[会場]A
③ 三分一 博志 [日時]6月8日(日) 12:30-14:30 [会場]A
④ 坂 茂 [日時]6月8日(日) 14:40-15:50 [会場]A
⑤ 坂×三分一 [日時]6月8日(日) 16:00-16:30 [会場]A*対談
⑥ 山口 洋一郎 [日時]4月29日(火・祝) 14:00-15:30 [会場]B
《会場》
A:茅ヶ崎公園体験学習センター うみかぜテラス(住所:茅ヶ崎市中海岸3-3-9)
B:木熨斗(きのし)(住所:茅ヶ崎市南湖3-17-20)*山口 洋一郎が両親のために設計した家
《定員》会場Aは300名、会場Bは50名
《料金》各回500円
《申込》事前申込制・先着順
《申込方法》3月1日(土)から申し込み開始(2月下旬、美術館ホームページにてお知らせいたします)
ワークショップ
子どもワークショップ|いろくみ®ー色と形の造形ワークショップ
《講師》小倉 ひろみ(スタジオピーパ代表、プロダクトカラープランナー)
《日時》5月4日(日)
①10:30-12:00 [対象] 3才~小学2年生と保護者 [定員]12組
②14:00-15:30 [対象] 小学3年生〜6年生 [定員]16名
《会場》美術館2階アトリエ
《料金》※お土産付
①2人800円、3人1,300円
②1人500円
《申込》事前申込制・先着順
《申込方法》4月1日(火)10:00より、電話(0467-88-1177)または美術館受付にて開館時間内にお申し込みください。
キュレータートーク
担当キュレーターによる展覧会の魅力紹介
《日時》①5月6日(火・休) ②6月7日(土) 各日14:00-(約45分)
《会場》美術館展示室
《担当》藤川悠(当館学芸員)
《料金》無料(要観覧券/事前申込不要)
※目の不自由な方、耳の不自由な方は事前にご相談ください。
【先生向け】文化芸術教育プログラム
先生たちのための10日間
子どもたちとともに過ごす先生たちを、美術館の展覧会にご招待。美術館で開催される展覧会の最初の約10日間、無料で鑑賞していただけます。様々な切り口で開催される茅ヶ崎市美術館の展覧会の魅力を体感していただき、児童・生徒との会話にご活用ください。
対象︰保育園、幼稚園、小、中、高、大学の教員、学童スタッフの皆様
春の期間︰2025年4月1日(火) ー4月13日(日)
※所属が分かるものを受付にて提示(例:職員証、名刺等)
※期間は休館日を除く
略歴
山口 洋一郎| YAMAGUCHI Yoichiro
1946年、山形県生まれ。1969年、東京工業大学理工学部建築学科卒業。1971年、同大学院にて日本建築史家の平井聖に師事。修士課程修了後、岡設計に勤務。1983年、建築設計事務所・洋建築企画を茅ヶ崎に構える。茅ヶ崎を中心とする湘南地域を拠点に、文化施設、子育て施設、福祉施設、教育施設をはじめとする公共建築から個人住宅まで幅広く手掛ける。地域に根ざした建築設計で知られ、神奈川建築コンクール最優秀賞(1988年)、藤沢都市デザイン賞(1996年)などを受賞。代表作に神奈川県立湘南高等学校(1996年/神奈川県)、神奈川県立茅ケ崎養護学校(1999年/神奈川県)、カスヤの森現代美術館(1994年/神奈川県)などがある。
内藤 廣|NAITO Hiroshi
1950年、神奈川県生まれ。1976年、早稲田大学大学院理工学研究科にて吉阪隆正に師事。修士課程修了後、フェルナンド・イゲーラス建築設計事務所、菊竹清訓建築設計事務所に勤務。 1981年、内藤廣建築設計事務所を設立。 2001年から東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻にて教授、副学長を歴任。2011年、東京大学名誉教授。 2023年、多摩美術大学学長を務める。日本建築学会賞(1992年)、村野藤吾賞(2000年)、芸術選奨文部科学大臣賞(2020年)などを受賞。 代表作に鳥羽市立海の博物館(1992年/三重県)、 高田松原津波復興祈念公園 国営追悼・祈念施設(2019年/岩手県)、 東京メトロ銀座線渋谷駅(2020年/東京都)などがある。
坂 茂|BAN Shigeru
1957年、東京都生まれ。南カリフォルニア建築大学、クーパー・ユニオンで建築を学び、現在、東京・パリ・ニューヨークに事務所を構える。紙管を使った建築や、木材を使った革新的な構造で知られる。1995年、NGO「Voluntary Architects’ Network(VAN)」を設立し、世界各地での災害支援に数多く貢献したことから、プリツカー建築賞(2014年)、マザー・テレサ社会正義賞(2017年)、アストゥリアス皇太子賞平和部門(2022年)、高松宮殿下記念世界文化賞建築部門(2024年)などを受賞。代表作にポンピドー・センター メス(2010年/フランス)、紙のカテドラル(2013年/ニュージーランド)、静岡県富士山世界遺産センター(2017年/静岡県)、禅坊 靖寧(2022年/兵庫県)、豊田市博物館(2024年/愛知県)などがある。
三分一 博志 | SAMBUICHI Hiroshi
1968年生まれ。広島や瀬戸内を主軸に活動し、自然・風土・歴史など、その地をめぐる事象を長い時間かけ丹念に観察し、分析することで知られる。建築がいかに地球の一部になりうるかをテーマに、風・水・太陽など自然エネルギーを“動く素材”として建築に採り込み、日本建築大賞(2010年)、日本建築学会賞(2011 年・2017年)、The Daylight Award(2018年)、村野藤吾賞(2018 年)を受賞。代表作に北向傾斜住宅(2003年/山口県)、三輪窯(2002年 / 山口県 )、自然体感展望台六甲枝垂れ(2010年/兵庫県)、宮島弥山展望台(2013年/広島県)、直島ホール(2015年/香川県)、システアナ美術館「The Water」(2017年/デンマーク)などがある。
西沢 立衛 | NISHIZAWA Ryue
1966年、東京都生まれ。1990年、横浜国立大学大学院修士課程修了。修士課程修了後、妹島和世建築設計事務所に入所。1995年、妹島和世と共にSANAA(サナア)を設立。1997年、西沢立衛建築設計事務所を設立。現在、横浜国立大学大学院Y-GSA教授。プリツカー賞※(2010年)、日本建築学会賞(2012年)、吉阪隆正賞(2017年)、高松宮殿下記念世界文化賞※(2022年)などを受賞。代表作に金沢21世紀美術館※(2004年/石川県)、ルーヴル・ランス※(2012年/フランス)、済寧市美術館(2019年/中国)、あなぶきアリーナ香川(2024年/香川県)などがある。
※印はSANAAとして妹島和世との共同設計および受賞
内藤 礼| NAITO Rei
1961年、広島県生まれ。1985年、武蔵野美術大学造形学部視覚伝達デザイン学科卒業。「地上に存在することは、それ自体、祝福であるのか」を一貫したテーマとして作品を手がける。これまでの主な個展に「Being Called」フランクフルト近代美術館企画、カルメル会修道院(1997年/ドイツ)、「明るい地上には あなたの姿が見える」水戸芸術館現代美術ギャラリー(2018年/茨城県)、「うつしあう創造」」金沢21世紀美術館(2020年/石川県)、「breath」ミュンヘン州立版画素描館(2023年/ドイツ)、「生まれておいで 生きておいで」東京国立博物館、銀座メゾンエルメス フォーラム(2024年/東京都)。パーマネント作品に《このことを》家プロジェクト「きんざ」(2001年/香川県)、《母型》豊島美術館(2010年/香川県)がある。
坂倉 準三|SAKAKURA Junzo
1901年、岐阜県生まれ。1927年、東京帝国大学文学部美学美術史学科美術史卒業。1929年に渡仏し、エコール・スペシャル・デ・トラヴォ・ピュブリック(土木学校)に学ぶ。1931年から1936年までル・コルビュジエに師事。1936年に帰国、パリ万博日本館建設のため再渡仏。1940年、坂倉準三建築事務所を開設。1946年、坂倉準三建築研究所に改称。1966年、アメリカ建築家協会海外名誉会員。1969年、死去(享年68)。日本を代表するモダニズム建築で、日本建築学会賞作品賞(1961年)、日本建築学会賞(1968年)、日本都市計画学会石川賞(1967年)などを受賞。代表作に東急文化会館(1957年/東京都)、羽島市庁舎(1959年/岐阜県)、新宿駅西口広場(1966年/東京都)などがある。
ル・コルビュジエ|Le Corbusier
1887年、スイス ラ・ショ-=ド=フォン生まれ。本名:シャルル=エドゥアール・ジャンヌレ=グリ。1900年、同地の美術学校で学び、オーギュスト・ペレやペーター・ベーレンスのもとで働く。1917年、パリに拠点を移す。1920年、雑誌『レスプリ・ヌーヴォー』において「ル・コルビュジエ」のペンネームで建築論を連載。1922年、従兄弟のピエール・ジャンヌレと事務所を設立。1965年、死去(享年77)。合理性や機能性を追求し、ドミノシステム、近代建築の5原則、無限成長美術館などの方法を考案し提唱。近代建築の巨匠として知られる。代表作にサヴォア邸(1931年/フランス)、ユニテ・ダビタシオン(1952年/フランス)、ロンシャンの礼拝堂(1955年/フランス)などがある。
高橋 靗一※+第一工房|TAKAHASHI Teiichi+DAIICHI-KOBO ※読み方:ていいち 靗一の「靗」は青偏に光。
1924年、中国・青島市生まれ。1949年、東京大学第二工学部建築学科卒業。卒業後は1956年まで逓信省営繕部設計課に勤務。1956年、武蔵工業大学建築学科助教授。1960年、第一工房を創立。1967年、大阪芸術大学教授。退職後、同大学名誉教授。2016年、死去(享年91)。詳細なリサーチを行い、細部のデザインまで拘り抜いた建築で知られ、日本建築学会作品賞(1971年)、日本建築学会作品賞(1982年)、BCS賞(1986年等)、2004年村野藤吾賞(2004年)を受賞。代表作に佐賀県立博物館(1970年/佐賀県)、東京都立中央図書館(1972年/東京都)、全労済情報センター(1995年/東京都)などがある。
山本 卓卓|YAMAMOTO Suguru
1987年、山梨県生まれ。劇作家、演劇集団「範宙遊泳」代表。2007年、桜美林大学総合文化学群演劇専修在学中に、劇団「範宙遊泳」を旗揚げ。人の倫理観を揺さぶる作風で知られ、Bangkok Theatre Festival最優秀脚本賞・最優秀作品賞(2014年)、第66回岸田國士戯曲賞(2022年)を受賞。2022年、 マップや冊子、場所の言葉を頼りに、観客自らが歩きながらストーリーを追う「オブジェクト・ラブ・ストーリー」を発表。本展では、茅ヶ崎に滞在し、建築家、街の人々、場所との出会いをもとに、本を手にした人が空間に思いを巡らせつつ自らの詩を創出していく新たな詩集作品「空間の詩」を初公開。
玉井 洋一|TAMAI Yoichi
1977 年、愛知県生まれ。現在、神奈川県小田原市在住。建築家、アトリエ・ワン パートナー。2002 年、東京工業大工学部建築学科卒業。2004 年、同大学院修士課程修了後、塚本由晴と貝島桃代の建築設計事務所アトリエ・ワンに勤務。2015 年から同事務所のパートナー。日常の中で目にした建物や場所への気づきを、自ら撮った写真に短い文章をつけてSNS にひっそりと投稿している。本展では当館から気軽に行くことができる美術館の中から3つの美術館、真鶴町立中川一政美術館(設計/ 柳澤孝彦)、ポーラ美術館(設計/ 日建設計)、横須賀美術館(設計/ 山本理顕)を選び、玉井独自の視点により紹介。
小倉 ひろみ|OGURA Hiromi
1959年、東京都生まれ。株式会社スタジオピーパ代表、プロダクトカラープランナー。1982年、東京藝術大学美術学部デザイン科インダストリアルデザイン専攻卒業。1982年、NECデザインセンターにて情報機器のプロダクトデザインを担当。1987年、渡伊しミラノのCMF*デザイン提唱者C・カステリに師事。1991年に帰国後、 (株)スタジオピーパを設立し、車・家電・住宅設備メーカーへの色提案などを行う。2010年、色彩・デザイン・アートの基礎となる配色造形トレーニングツール「いろくみ®」を考案。本展では「光」「大地」「水」をテーマにした3つの「いろくみ®」の自由体験コーナーを設置。
*COLOR(色)、MATERIAL(素材)、FINISH(仕上げ)のこと