展覧会
開催終了
2004年1月24日(土)-2月29日(日)
現代書を拓く -水越茅村展

私たちの日常生活に最も身近な芸術の一つである「書」は、筆を用いて黒い墨で白い紙に「書く」といった極めて素朴で親しみ深い、またそれ故に高潔で深遠な、古来伝統の表現方法です。文字の持つ意味、そして書かれる文字それ自体の持つ美しさ―線や形、五彩と言われる墨の色、筆運びが生むリズムなど―それらは書く者の感情や感性、思考等と相俟って、書かれる度に新たな生命を与えられ、見る者の心に響きます。
水越茅村(みずこしぼうそん 1914-85)は、茅ヶ崎で終生を過ごした書家です。また教育者としても活躍し、高い評価を受けました。茅村は1936(昭和11)年に神奈川県師範学校(現・横浜国立大)を卒業後、茅ヶ崎、藤沢などで小学校の教員を務める一方、髙橋竹村、上田桑鳩に師事し、1950(同25)年には竹村門下による照心書道会創立に参加、その翌年桑鳩により創立された奎星会会員となり、以後第33回展まで出品を続けました。1959(同34)年には第2回毎日前衛書展に「十清九濁」を出品し毎日大賞を受賞、その2年後同展にて会員に推挙され、審査部委員となります。1970(同45)年に茅ヶ崎市立鶴嶺小学校長を最後に教職を退いて後は、書塾・茅花書芸院を開くなど後進の育成に尽力、また個展開催や海外の展覧会への出品など、制作活動にもより一層の力を注ぎました。髙橋竹村のもとで古典の修業を積み、次いで上田桑鳩のもと現代の書を学んだ水越茅村。その作品群では伝統と前衛、文字性と非文字性の狭間にあってなお生き生きと、躍動的かつ堅固なる造形が豊かな輝きを放っています。また人柄は温厚で包容力があり、周囲の人々に慕われていたといいます。茅村は茅ヶ崎を中心に数多くの場所で碑文等を揮亳しており、地域に根差したその書業は、まさに「最も身近な芸術」として後世に残されました。
本展では、茅ヶ崎市美術館収蔵「十清九濁」(1959年)や「悲願」(1977年)など文字性に基盤を置きつつも主観を重視、自由独創の表現を見せる前衛の書約40点に、「田風麦氣」(1961年)「玄」(1974年)など文字性の強い作品約40点を展観。また硯や筆など故人愛用の品により仕事場を再現、「私達は、いつも美しいものにあこがれ、その発見につとめ、創造していくのである」(『照心書道』1960年11月号~61年7月号より水越茅村「前衛書道の話」)と語った書家の、その芸術の軌跡を辿ります。

《墨奴》 1978年 個人蔵
会期2004年1月24日(土)-2月29日(日)
休館日月曜日(ただし2月11日は開館)、2月12日(木)
開館時間10:00-17:00(入館は16:30まで)
料金一般300円(200円) 大学生100円(70円) 高校生以下無料
※市内在住65歳以上、市内在住の障がい者およびその介護者は無料
※( )内は20名以上の団体料金
会場茅ヶ崎市美術館 展示室
主催財団法人茅ヶ崎市文化振興財団

関連イベント

特別講座「水越茅村の芸術」
日時:2004年2月1日(日) 14:00-15:30
会場:美術館展示室3
講師:石井抱旦(毎日書道展審査会員)
定員:40名(申込不要/先着順)
料金:無料

ミニコンサート「BLOSSOM」
日時:2004年2月22日(日) 14:00-
会場:美術館エントランスホール
出演:笠井雅萌(箏)、福岡雅隆(箏)、田原雅柊(十七絃)
料金:無料(申込不要)

ボランティアスタッフによる作品解説
日時:会期中の土・日(2月1日、22日、28日、29日を除く) 13:00-15:00 
会場:美術館展示室
料金:無料(要観覧券/申込不要)