展覧会
開催終了
2007年1月20日(土)-2月25日(日)
歿後八〇年 萬鐵五郎 ~東京/土沢/茅ヶ崎~

茅ヶ崎市美術館は平成10年(1998)の開館以来、今年で10周年を迎えます。その10周年の幕開けとして、このたび企画展「歿後八〇年 萬鐵五郎~東京/土沢/茅ヶ崎~」を開催いたします。
萬鐵五郎(1885-1927)は、いうまでもなく日本近代の明治末─大正期を代表する画家です。当時のヨーロッパ絵画のめまぐるしい動向を日本に居ながら静かに見据え、それを東北人、ひいては日本人としての土着の感覚で独自の芸術にまで昇華した偉大な画家であることはよく知られています。
萬の作品は大きく3期に区分されます。東京美術学校の卒業制作≪裸体美人≫(東京国立近代美術館蔵)で提示されたフォーヴィスムの時期、つづく郷里の岩手県土沢に帰り夢中で描きためた作品群の中から醸成された≪もたれて立つ人≫(同)に代表されるキュビスムの時期、そして病気療養のため茅ヶ崎に転居した大正8年(1919)以降に顕著となる伝統的な「南画」に傾倒した時期の3期です。最後の「南画」とは、江戸時代の池大雅や蕪村、浦上玉堂などによって確立された日本的文人画の総称のことです。このような3つの時期の間においても、その枠にとらわれない彼の新たな絵画表現への挑戦は続けられました。今回の展観は、その作風の変遷を彼の若年時代からの心の成長、そして内的心境の変化とともに跡づけようという試みです。
展示される作品の総数は40数点をかぞえ、近年重要文化財に指定された≪裸体美人≫をはじめ、卒業後に仕送りを打ち切られ東京での生活の苦悩がにじみ出るかのような≪雲のある自画像≫(岩手県立美術館蔵)、土沢への帰郷時代の≪丘のみち≫(萬鉄五郎記念美術館蔵)や≪もたれて立つ人習作≫(岩手県立美術館蔵)、長く一般の目に触れることの少なかった≪松島屏風≫(個人蔵)、茅ヶ崎で晩年に描かれた≪少女(校服のとみ子)≫(岩手県立美術館蔵)などのほか、このほど新たに発見された作品も幾つか含まれます。
この度の企画展は、当美術館としてはまことに厳しい予算状況のなか、館員の総力をあげての事業です。萬は亡くなるまでの約8年間、茅ヶ崎市南湖の通称「天王山の木村別荘」に住み、みずからの制作と後輩たちの指導に打ち込んでいます。彼の絵が今なお多くの人びとに親しまれ愛されるのは、その革新的な画風とは裏腹な穏和な人柄と無縁ではないでしょう。今回の展覧会をとおして一人でも多くの市民の皆さんをはじめとする人びとに、「かつて茅ヶ崎には 萬鐵五郎という 偉大な画家がいた」ことを、実際の作品を眼で観て知っていただければと願ってやみません。

《海岸風景》 1926年 油彩・キャンバス 茅ヶ崎市美術館蔵
会期2007年1月20日(土)-2月25日(日)
休館日月曜日(ただし2月12日は開館)、2月13日(火)、2月14日(水)
開館時間10:00-17:00(入館は16:30まで)
料金一般500円(400円) 大学生300円(250円) 高校生以下無料
※市内在住65歳以上、市内在住の障がい者およびその介護者は無料
※( )内は20名以上の団体料金
会場茅ヶ崎市美術館 展示室1
主催財団法人 茅ヶ崎市文化振興財団

関連イベント

特別講座「萬鐵五郎 揺らぐ近代絵画」
日時:2007年2月17日(土) 14:00-15:30
会場:美術館展示室3
講師:古田亮(東京藝術大学大学美術館助教授)
定員:40名(申込制/先着順)
料金:無料
申込:1月20日(土)10:00より、電話または美術館にて受付。

ミニコンサート「シタール&タブラ 北インド古典音楽リサイタル」
日時:2007年2月11日(日・祝) 14:00-
会場:美術館エントランスホール
出演:末次歩(シタール)、ディネーシュ チャンドラ ディヨンデ(タブラ)
料金:無料(申込不要)

ギャラリートーク
日時:2007年2月18日(日) 14:00- 
会場:美術館展示室
料金:無料(要観覧券/申込不要)