1902(明治35)年秋、長期に渡る海外公演から帰国したばかりの俳優川上音二郎、貞奴夫妻が居宅としたのがここ茅ヶ崎の萬松園でした。すでに別荘を持っていた九代目市川團十郎を慕ってのことと思われます。当館では2011年、音二郎歿後100年、貞奴生誕140年の折にこれを記念して特別展を開催いたしましたが本年、2014年が音二郎生誕150年に当たることから前回に続く資料展を開催することといたしました。前人未到の冒険旅行ともいうべき海外公演を成功させ、世界的な名声を手にした夫妻でしたが、帰国後の茅ヶ崎では本格的な近代演劇を日本に紹介するための活動に取りかかります。彼らが目指したのは形式化した伝統演劇ではなく、またエリートの教養としての演劇でもない、庶民の生活に活力を与えるための新演劇の上演でした。さらに、実現にこそ至りませんでしたが、演劇学校開設もここ茅ヶ崎で計画されました。その最初の成果が1903(明治36)年、東京明治座におけるシェークスピア〈オセロ〉の日本初演でしたが、脚本の準備や俳優たちの稽古は当地で行われました。本展を通してあらためて茅ヶ崎が近代演劇揺籃の地であったことを多くの市民の皆様にご理解いただければ幸いです。
今回は田中美恵子氏(国際基督教大学大学院)、小沢優子氏(IOC[国際博物館会議]フランス支部会員)のご協力により、ボストンおよびパリにおける夫妻と川上一座の活動についての新発見資料も合わせて展示いたします。また同時開催の「明治を歩く―湘南と武蔵野」展との意外な接点があることについてもご紹介します。本展と合わせてご観覧ください。
会期 | 2014年9月7日(日)-9月28日(日) |
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休館日 | 月曜日、9月16日(火)、17日(水)、24日(水) |
開館時間 | 10:00-18:00(入館は17:30まで) |
料金 | 無料 |
会場 | 茅ヶ崎市美術館 展示室3 |
主催 | 公益財団法人茅ヶ崎市文化・スポーツ振興財団 |
同時開催 | 企画展「明治を歩く -湘南と武蔵野 府中市美術館コレクションを中心に」 |
関連イベント
ギャラリートーク
展覧会担当学芸員が会場を巡り、展示作品を解説します。
日時:2014年①9月27日(土) 13:00- ②9月28日(日) 15:00-
会場:美術館展示室3
講師:①小澤優子(ICOM(国際博物館会議)フランス支部会員)
②田中美恵子(国際基督教大学大学院博士後期課程)
料金:無料(要観覧券/申込不要)