イベントレポート
夏の企画展「かくれんぼーさがして。そして、」準備 東京造形大学連携「メゾチントの技法を伝えるアニメーションづくり」(その1)

夏の展覧会に向けて、取り組んでいることについて、いくつかご紹介します。夏の展覧会で展示する丹阿弥丹波子(たんあみ・にわこ)さんの作品は、銅版画のメゾチントという技法でつくられています。メゾチントは、フランス語で「マニエール・ノワール(黒の技法)」と呼ばれており、黒の濃淡(グラデーション)での表現が特徴的です。

丹阿弥丹波子「花・再」2008 メゾチント、紙

手順としては、最初に銅で出来た薄い板に、ベルソーという道具を使って無数の傷をつけます。この状態で、インクを塗り込め、表面の余分なインクを拭き取ってプレス機で紙に刷ると、傷の部分に入り込んでいたインクが紙に吸い取られ、ビロードのような真っ黒な画面が出来上がります。
そして、スクレパーやバニッシャーという道具を使って、傷の部分を平らにしたりに磨いたりして、白やグレーなどの色の階調(グラデーション)で絵柄を浮き上がらせていきます。

消しゴムはんこや木版画であれば、家で作ったり学校で習ったりするのでなじみ深いのですが、私たちがあまり目にしない道具をつかうメゾチントの技法は、言葉の説明だけではなかなか伝わりづらいのが難点です。

そこで、東京造形大学で版画を教えられている生嶋順理先生にご相談し、子どもたちに向けてメゾチントの技法が伝わるようなショートアニメーションをつくってもらうことにしました。生嶋先生監修のもと、制作を担ってくださるのが東京造形大学大学院生の竹渕愛留萌さん、中島瑞貴さんのお二人。

美術館で丹阿弥丹波子さんの作品を実際に見ながらの打合せ(2022.1月)

アニメーションづくりのポイント
・目立て→下絵転写→削り、磨き→インク詰め、拭き取り→擦りなど、4~5過程の工程が伝わるもの
・道具とその使い方が伝わるもの
・シンプルなイラストが動くもの
・メゾチントの版画技法を知るきっかけに
・制作方法を知ることで、作品に興味をもってもらうきっかけに

東京造形大学(東京都八王子市)
東京造形大学でアニメーションのラフ案をもとに打合せ(2022.5月)

アニメーションのラフ案をもとに、版画の専門用語を日常的な言葉に置き換えたり、イラストの大きさや配置を変えてみようかなど、打合せで意見を出し合います。
人に伝わるアニメーションを目指し、東京造形大学の皆さんが取り組んでくださっています。

[学芸員 H.F]