5月31日、日曜日の天気はわずかな雲がある程度。快晴です。少し暑いけれど自然観察にはうってつけの日でした。
今回のワークショップの内容は「自然観察」と「スケッチ」の二本立てです。一見分野が異なる作業でも「見つめる」という行為は共通しています。
しかし、自然の中で対象を観察するのと、屋内で対象を見つめながらスケッチをするのとでは、同じ見る行為でも頭の使い方が違ってきます。今回はその違いを感じとることをテーマにしました。また、講師から詳しい説明を聞けば、おのずと対象の根本的な理解に繋がります。今まで同じように見えた緑の葉っぱも、説明を聞いてからは裏側のざらざらした感触があるのとないのとの区別がつくようになるというわけです。成り立ちを理解すればスケッチにも反映されるでしょう。
参加者はおやこ8組18名。まずはアトリエ集合です。担当である私から今回のワークショップの目的と日程を説明しました。その後講師から注意事項を聞き、林がある屋外アトリエへ。手にするのはガラスの小さい小瓶。この中に描く対象となる植物や虫など出会った生き物を捕まえます。
さっそく講師は目にした木々や植物、昆虫などの名前とその特徴や生態を詳しく説明してくれました。鳥の鳴き声を聞いてすぐさまその鳥を言い当てるなど、オールラウンドな自然観察のプロに私も含めて皆一様に敬服し、尊敬のまなざしで見つめました。
その後舞台を茶室・松籟庵がある日本庭園に移し、池で大きく育ったミシシッピアカミミガメを観察、講師から外来種や無断投棄の問題を伺いました。勝手に池に逃がすのはいけません。
思い思いに採取した獲物を手にし、今度はアトリエへ。用意された色鉛筆やフェルトペンを使ってスケッチしました。講師の説明がまだ頭の中に残っているのか、スケッチする様子は真剣そのもの。時間があっという間に過ぎました。おやこの会話も自然とはずんでいましたよ。
最後にそれぞれの作者が出来上がった作品をみんなの前で説明してくれました。細かい描写が難しかったとのこと。でもみんな工夫して上手に描いていました。
「発見」と「理解」そして「生命の記録」を今回のワークショップのお土産として準備したつもりです。うまく持ち帰ることが出来たなら担当者としてとても嬉しいです。「生命の記録」とは描いたスケッチはもちろんのこと、成長期のお子さんとお子さんを見守る親御さんの「生命の記録」でもあります。
[学芸員:T.T]
- 実施日時:5月31日(日)13:30~15:40
- 講師:岸一弘さん(市・景観みどり課職員)と奥様
- 対象:4歳以上のこどもとその保護者
講師プロフィール
1958年、神奈川県茅ヶ崎市生まれ。子どものころからの虫好きが高じて生物調査の道へ。東京農工大学農学部卒。農林省植物防疫所を経て1990年、茅ヶ崎市の職員となる。茅ヶ崎市文化資料館で身近な自然のおもしろさ、ふしぎ、大切さを伝えるための自然観察会を主催し、茅ヶ崎市内の生物調査をもとに特別展を開催。2001年に仲間とともに、“野外まるごと博物館”を目的とした茅ヶ崎野外自然史博物館の活動をはじめる。日本生態学会、日本鱗翅学会会員。著書に『虫たちはどこへいくのか』『いろいろたまご図鑑(共著)』(以上、ポプラ社)がある。