イベントレポート
2016年8月10日
「じぶんのまわり」展 作品のヒミツ1

7月17日にオープンした「じぶんのまわり-耳でながめて 目でかいで 鼻でふれて 手できいて-」展。
初日から、市内外の中学生の美術部の団体が見に来てくれています。

美術館に来るまでに、夏の暑さに疲れ気味の生徒さんの顔が、帰る頃にはめっきり明るい顔になってくれているのが印象的です。

今回、展覧会に向けてワークショップを一緒にした松林中学校のみんなも見にきてくれました。

実は、美術館に入ってすぐのエントランスに展示されている石の作品は、松林中学校の美術部と西浜中学校の美術部のみんながマスラックスさんと一緒に「石の声を聴くにはどうしたらいいんだろう?」というワークショップをして出来上がった作品なのです。

夏のはじまりに実施したこのワークショップは、森の中で人生の半分以上を過ごし、動物や自然の声を聴く能力を身につけたといわれる人物「グランドファーザー」の話からスタートしました。

茅ヶ崎に住む私たちにとって身近な海。そこに落ちている石。その声を聴けたらどんな感じだろう?

そんな問いかけを胸に、みんなは海にいき、海風をめいっぱい受けながら、感覚的にこれだと選んだ自分の石を教室に持ち帰りました。

手の中に入った石はどれも特徴的で、丸くてつるつるした石、ごつごつとしていてコバルトブルーがちりばめられたような綺麗な石、真っ黒で平べったく光沢のある石などなど。

1つ1つ個性があり、あちこちで「おまえっぽいな~」とみんなが互いに声がけをしている声がきこえてきました。

海辺で拾った石をよくよく観察することから、石の声を聴く方法を考えました。

石と石をぶつけてみれば聴こえるのでは?

という意見がでましたが、その他には考えつかない様子、、、。

そこで、マスラックスさんがいつも使っている「電気」の力をかりて石の声を聴くという方法をみんなで試しました。
石の裏側に銅箔テープを貼り、コードをはんだ付けして、板にとりつけるなどの普段なかなかすることのない電子工作。
電子工作をした石を、電球とつなげて電球の色が変わっていくのを楽しんだり、音がでたり、モニターの画面上でグラフが動いたりと、石に触れることでおこる様々な現象を驚きながら楽しみました。

さらに、学校では電気を通さないと学んだ素材が、わずかでも電気を通し、工夫をすればもっと電気を通すことや、私たちが使っているスマートフォンが実は今回の電子工作に近い作りであることなど、マスラックスさんから出てくる話は、みんな初めて知ることばかり。

中学生のみんながじっと考えたり、海で海風や波を楽しんだり、電子工作に手こずったり、石の反応にハッとしたりする様子は、展覧会場で上映している映像から見ることができます。(この映像は、多摩美術大学の学生である小島さんと水戸さんが、密着取材をしてくれたものです。)

この作品が作られたきっかけは、一昨年マスラックスさんが森の達人と出会い「猿を追う」という体験がもとになっています。

達人は、森の中で誰も気づくことのできない猿の足跡を見つけると、その猿が、いつ、どちらの方角に向かったのか、おまけに、オスなのかメスなのかも足跡1つから分かったというのです。

そのことにとても驚いたマスラックスさんは、森の達人が何十年もかけて出来るようなことを、いま持っている自分たちの技術でできないだろうかと考えたといいます。

見えないものを見えるように、聴こえないものを聴こえるように。

夏はまだ始まったばかりです。
マスラックスさんの素敵な作品たちが、涼しい美術館で皆さんを待っています!


[学芸員:H.F]