9月に始まった「北斎漫画展 画は伝神の具也」。
雨の日ばかりのひと月でしたが、「葛飾北斎」のビックネームともあって、たくさんの方が来館しています。
しかし、不思議なことに館内は静かでゆったりとした時間が流れています。理由は質問の数。企画展開催中は、展示についてよく質問をいただきますが、今回の「北斎漫画」については、それほど多くありません。刊行当初、「絵手本」として発行された「北斎漫画」は、門人の手本となるよう、北斎のバラエティに富んだ絵がアイコン集のようにまとめられています。タイトルが書き入れてある以外に文字はなく、内容は観て面白いものばかり。北斎が込めた笑いのポイントがわかると、思わずぷっと吹き出してしまいます。解説を聴くとより楽しめるものも。美術館スタッフが鑑賞しながら作品を解説するギャラリートークにぜひご参加ください。
また、9月22日には、北斎漫画展の関連イベントとして落語「高砂寄席」、春風亭朝之助さんによる独演会を行いました。
会場は、美術館と同じ高砂緑地内に建つ松籟庵(しょうらいあん)。日本庭園の一角にあり、茶室・書院の作りからお茶会が行われることの多いスペースですが、今回は、台に緋毛氈(*1)を敷き高座座布団(*2)を置いて高座(*3)を作り、客席用に座布団を運び入れて、寄席(*4)となる会場を作りました!
演目は「だくだく」と「三方一両損」を披露。松籟庵で落語を行うのははじめてでしたが、客席の雰囲気もよく、スタッフまでもが笑いを取ってしまいました。
江戸の人々の生き生きとした姿を描きとめた「北斎漫画」と江戸の文化を今に伝える「落語」。どちらも楽しんでいただけたのではないでしょうか。
そして、北斎漫画展はまだあとひと月会期があります。イベントもまだまだたくさん。
10月10日(日)には「世界が驚いた北斎漫画」をテーマに、世界有数の北斎漫画コレクター・浦上満さんをお招きして講演会を行います。
18歳のころに北斎漫画と出会い、以来集め続けて47年、その数なんと1,500冊になったそうです。「北斎漫画」は1~15編まであり、15冊の本になって刊行されました。ですから、15冊のものを1,500冊集めたというのは、現代の漫画に置き換えると…
「こち亀」1~200巻まで持ってるよ!という話ではなく、「スラムダンク」全31巻を10冊ずつコレクションして、310冊持ってるぜ!ということになります。
例える必要があったのかはともかく、北斎漫画についてどんな話を聴くことができるのか、どうぞお楽しみに!
*1.緋毛氈(ひもうせん)…赤い色の布
*2.高座座布団(こうざざぶとん)…演者が座る、紫色の座布団
*3.高座…演者が座るための高くあげられた台
*4.寄席(よせ)…芸を見せる場所
[広報:K.I]