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          「蓮華幻相 般若心経」〈心経〉 


村越 襄(むらこし・じょう 1925-1996)

1988(昭和63)年 発色現像方式印画 ミクストメディア・印画紙 450×900mm
《個人蔵》


村越襄《「蓮華幻相 般若心経」〈心経〉》1988年
 

これは、村越襄が晩年に手がけた《蓮華幻相》シリーズのうち、20点組の連作となる「蓮華幻相 般若心経」の一枚目です。蓮の葉の群生は多重露光(一枚の写真の中に複数の画像を写す撮影方法)により深みを増し、透けた葉脈が魅せる世界はとても幻想的です。水面は暗く、そのうえに宝石をちりばめたような色とりどりの箔が置かれ、中心は金箔により浮かび上がるように「心経」の二文字が描かれています。それはまるで映画のタイトルのように連作の始まりを告げています。
《蓮華幻相》シリーズは写真家鈴木 薫の撮影した蓮の写真に、「往生要集」や「般若心経」を金銀箔や顔料を用いて加工した作品です。
「般若心経」は二百と六十余文字程から成り、その文字すべてがこの連作の中におさめられています。
20点ある作品の中で、蓮は様々な姿をみせてくれます。青々とした葉を広げ生命力をたぎらせたもの、水面に影を落としおぼろげな輪郭のもの、まるで赤子を内に宿したようにぷっくりとしたつぼみをつけたもの、咲いて、散り、実だけを残したもの。その一点一点に色を変え、大きさを変え、寄り添うように存在する文字は、自然とみるもののこころに落ちてくるようです。
この作品は現在開催中の企画展「村越襄 祈りのデザイン:蓮華幻相」(2013年2月24日まで)に展示されています。村越襄の晩年の作品をアートディレクターとしての活動とともにご紹介します。是非、ご高覧下さい。

(美術館 K.I )

<略歴 >
1925(大正14)年、横浜市に生まれる。洋画と日本画を学び、1945(昭和20)年に出征、終戦を沖縄県宮古島でむかえる。1946(昭和21)年復員後、日本ビクター株式会社(現・株式会社JVCケンウッド)宣伝部の勤務を経て、1951(昭和26)年、株式会社ライトバブリシティ創立に参加。この頃に、茅ヶ崎市東海岸に転居(のち、藤沢市片瀬山に転居)。アートディレクターとして多くのカメラマンとの共同作業を行う。1977(昭和52)年、ライトパブリシティを退社、株式会社村越襄デザイン室を設立。1988(昭和63)年、「蓮花幻想」展(六本木・アクシスギャラリー)と「蓮華幻相」展(銀座・村越画廊)を開催。1996(平成8)年、神奈川県藤沢市で歿。71歳。

■企画展「村越襄 祈りのデザイン:蓮華幻相」
会期:2012年12月9日(日)〜2013年2月24日(日)