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                  「モンマルトル」 


土井 俊泰(どい・としやす 1918〜2012)

1971(昭和46)年 コンテ・紙/額装 56.5×76.1cm 《美術館蔵》


土井俊泰《モンマルトル》1971年
 

フランス、パリで最も高い丘・モンマルトル。
19世紀の半ば、ナポレオン3世の命を受けたジョルジュ・オスマンによる都市整備・パリ改造以前は、雑木林や採石場があり、ブドウ畑と麦畑、風車を備えた粉挽小屋が建つ、郊外風景がひろがっていました。そこへパリ改造により中心部から流出した人々が住みついた場所のひとつがこのモンマルトルの丘でした。また、1860年にパリ市に併合されるまでは税法上の利点から酒場や飲食店、ダンスホールなどが軒を連ねるようになり、その後も大衆を相手とする娯楽(歓楽)の街として発展してゆきます。
また、家賃の安さや、独特の大衆文化に魅かれ、若い芸術家もモンマルトルにつどいはじめます。マネやドガ、ルノワール、セザンヌ、モネなどいわゆる印象派の画家たちがモンマルトルのカフェの常連となり、ロートレックはムーラン・ルージュやシャ・ノワールなどのキャバレーを題材とし、ゴッホやピカソ、ブラック、モディリアーニらもこの街に暮らしました。

遠景にエッフェル塔やパリの市街を望み、間近にワインショップ・NICOLASや肉屋のAU COCHON ROSE[桃色の豚]がみえるこの景色は、アベス通りとラヴィニャン通りに面して建つホテル・BOUQUET de MONTMARTRE[モンマルトルの花束]の一室からのもののようです。
作者の土井さんがパリを訪れた1971年頃には、地域の人々の生活に密着した品物を扱う、昔ながらの商店があったこの一角も、1996年に落成したアベス劇場やおしゃれな洋品店の敷地となり、当時の面影はありません。

この作品は、1月28日(日)まで開催中の「冬季収蔵作品展」にて展示中です。

(美術館 N.Y )

<略歴 >
静岡県田方郡伊東町(現・伊東市)に生まれる。1939(昭和14)年、応召。1941(昭和16)年、帰国。静岡県の天竜で療養後1949(昭和24)年に帰郷。この頃、同地に転居してきた独立美術協会会員の菅野圭介とであい、1950(昭和25)年に師事。翌年、独立展に初入選、以後毎年入選。初めは菅野の画風に近い風景画を描いていたが、やがて半具象的、抽象的な作風に移る。1959(昭和34)年、茅ヶ崎市に転居。1961(昭和36)年、独立美術協会会員推挙。1967(昭和42)年、渡欧。ナショナル・デ・ボザール展にてアソシエ賞を受賞。この渡欧を期に再び具象に転向。1968(昭和43)年、「聖苑」を発表、翌年安井賞候補新人展に推薦出品される。1977(昭和52)年より1990(平成2)年まで女子美術短期大学非常勤講師を務める。1996(平成8)年、独立美術協会功労賞受賞。1999(平成10)年、茅ヶ崎市美術館企画展「土井俊泰の画業」が開催される。2012(平成24)年1月10日、逝去。


■常設展「冬季収蔵作品展」
会期:2012年12月9日(日)〜2013年1月27日(日)