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《第2号東京オリンピックポスター》(スタートダッシュ)


アートディレクション:亀倉雄策(かめくら・ゆうさく 1915〜1997)
フォトディレクション :村越 襄 (むらこし・じょう  1925〜1996)
写真         :早崎 治 (はやさき・おさむ 1933〜1993)


1962(昭和37)年 B全版(1010×720mm) カラー・グラビア印刷

画像提供:公益財団法人DNP文化振興財団


《第2号東京オリンピックポスター》(スタートダッシュ)1962年
 

1964年10月10日、オリンピック東京大会開会式当日はこれ以上ない晴天でした。日本中が固唾をのんで白黒テレビ画面に釘付けになったものです。各国選手団が入場行進する時の弾むようなリズムのマーチは戦後日本の復興の槌音の響きにも重なりました。若者たちの時代がきたことの実感があったでしょう。デザイン界にもこの時大きな変革がもたらされました。
茅ヶ崎市美術館で12月9日から開催される「村越襄むらこしじょう−祈りのデザイン:蓮華幻相れんかげんそう」展では戦後デザイン界に重要な足跡をのこした村越襄の生涯の仕事を紹介します。
この名高い「スタートダッシュ」はアートデイレクター亀倉雄策の下、村越(38歳)がフォトディレクターとして写真家早崎治と協働で手掛けた東京オリンピックの公式第2号ポスターで、第3号ポスターの「バタフライ」とともに村越の初期の代表作です。
 日本のグラフィックデザインは戦前まで「図案」と呼ばれていたように主に手描きの原稿を印刷していましたが、戦後、アメリカの商業美術の影響でカラー写真が広告宣伝美術の主人公となります。村越は早崎をはじめ多くの写真家と組んで「写真によるデザイン」の先駆者となりました。
 村越の仕事は作品が目指すものについて入念に考え、それを写真家に正確に伝えることにありました。「シャッターが押される前に出来ていなければならないことが重要」と村越はよく語っていました。
 黒い背景に100メートル走スタートの切られる瞬間、重なり合う黒人、白人の躍動する身体がこのポスターの生命ですが、実は「宗教画」のイメージを撮影者早崎に伝えていたと村越は証言しています。イタリアルネサンスの先駆的画家ジョットやフラ・アンジェリコの静謐で構築的な画風が聖なる平和の祭典にふさわしいとの直観があったからでしょう。その後、アートディレクター村越のデザインの底流として、常にこの見えないものへの「祈り」が一貫して続いていくことになります。

(美術館 M.O )

<略歴 >

村越襄は大正14(1925)年横浜に生まれたアートディレクター。信田富夫が設立した広告会社ライトパブリシテイに参加。写真家杵島隆、早崎治、吉田忠雄、篠山紀信らとカラー写真を用いた初期の広告デザインを多く手掛けた。代表作に亀倉雄策、早崎治との協働による《第2号・第3号東京オリンピックポスター》(1962・3年)など。1988年に写真家鈴木薫と非商業作品《蓮華幻相》のシリーズを発表。茅ヶ崎市と藤沢市に居住。平成8(1996)年没。享年71。

■企画展「村越襄 祈りのデザイン:蓮華幻相」
会期:2012年12月9日(日)〜2013年2月24日(日)