今月の1点 Monthly Pickup 9月
 
 

        
           「森のそばで/by a forest」 


原 良介(はら・りょうすけ 1975〜)

2012(平成24)年 油彩・キャンバス 162.0×227.3cm 《作家蔵》
Courtesy of Yuka Sasahara Gallery


原良介《森のそばで》2012年
 

11月4日まで開催中の「原良介―絵画への小径(こみち)―」展の出品作品から。
倒木と茶色の枯葉が折り重なるどこにもありそうな雑木林。不安定な足元に用心しながらゆっくり勾配を降りてくる女性。それだけの舞台設定ですが、ただならない気配があります。なにしろ一つの画面に同じ女性が3回登場するのです。
モデルとなった女性は画家の知人で、この森は女性にとって思い出の場所のようです。この土地を彼女と共に訪れたことから制作が始まったと作者は語っています。
原良介の絵画作品で一番特徴的なのは、地が透けて見えそうなほどの絵具の薄い塗り方です。接近すればキャンバスを這いまわるような艶(つや)やかで勢いのある筆跡に独特なドライヴ感覚を味わうことができるでしょう。これは原作品の大きな魅力です。原は作品の準備のために長い時間をかけますが、実際の制作は意図的に短時間で行われます。絵筆を持って画面に向かった時初めて起こる感興を瞬間的に閉じ込めるためのようです。
風景や人の形があらわされていることで鑑賞者は絵の中の世界に近づきやすくなるでしょう。ただしそこから先は私たちが経験的に見知っている空間や時間とは別次元の世界。足元が揺らぐような緊張感を伴う不思議な体験。これも原の絵画の魅力です。

(美術館 M.O )

<略歴 >
1975年平塚市出身。2000年に多摩美術大学美術学部、2002年、同大学院を修了。2001年の公募展「トーキョーワンダーウォール都庁2001」において大賞を受賞。2002年、トーキョーワンダーサイト本郷において「原良介展」、2009年、東京オペラシティアートギャラリーにおける企画展「project N36原良介」ほか個展、グループ展が多数開催されている。

■企画展「原良介―絵画への小径(こみち)―」
会期:2012年9月8日(土)〜11月4日(日)