今月の1点 Monthly Pickup 5月
 
 

        
                  「花・初夏」 


丹阿彌 丹波子(たんあみ・にわこ 1927〜)

2007(平成19)年 銅版画・紙 36.5×30.0cm 《大村コレクション》


丹阿彌丹波子《花・初夏》2007年
 

無色にちかい冬の時期を終え、再生するかのように一斉に芽吹く春の時期、そして若葉から濃い蒼へと変化する初夏。季節の変化には「色」もめまぐるしく移り変わってゆきます。
この絵に描かれている植物はドクダミや野草でしょうか。強い日差しを避けるようにひっそりと咲いていた、そんな草花がガラスのコップに活けられ、ビロード状の漆黒の空間のなかで静かに佇んでいます。
この作品はメゾチントと呼ばれる銅版画の技法で制作されています。
初め版は無数の細かい刻みを入れ表面をささくれ状態にし、金属のヘラのような道具を使用して、このめくれている画面を削ったり、目をつぶしたりして描画します。刻みが残っているところは、インクの色が濃く出、刻みが削られているところは白くなります。削る強弱によってグレーの階調の幅がひろがり、独特の風合いがでるのがこの技法の特徴です。
黒から白へ、一見モノトーンの世界のように見えますが、不思議なことに花や葉の「色」を感じます。実際、作者の丹阿弥さんは制作するにあたり、自分がみた「色」を版に削って描いているといいます。
あらためてじっくりと作品をみてみると…。淡い色彩が頭に浮かぶ、と同時にドクダミの独特の「におい」まで感じてしまうのは私だけでしょうか。

現在、「韮崎大村美術館所蔵 響きあう女性美術家の世界展」を6月10日まで開催しています。丹阿弥さんの作品はこのほかに2点展示しています。

【茅ヶ崎市美術館 S.T.】

〈略歴〉
1927年東京に生まれる。父は日本画家の丹阿彌岩吉。文化学院卒業。1953年独立展入選。1956年駒井哲郎に師事し銅版画を始める。1957年春陽展入選。以降連年出品、研究賞、岡鹿之助賞受賞。現在、春陽会会員、日本美術家連盟会員。



■企画展「韮崎大村美術館所蔵 響きあう女性美術家の世界展」
会期:2012年4月28日(土)〜6月10日(日)