今月の1点 Monthly Pickup 6月
 
 

        
               思鉢 雫  潤芽 


吉川 正道 (よしかわ まさみち) ( 1946‐   )作

《思鉢》(おもいばち) 2011年 磁器 
《雫》(しずく) 2010年 磁器
《潤芽》(じゅんが) 2003年 軸
すべて個人蔵


吉川正道 《思鉢》《雫》《潤芽》
 

                             左より:《思鉢》(5点)、《雫》
                             壁面:《潤芽》
                                 

 今回の吉川さんの展覧会では美術館の3つの展示室がそれぞれひとつの世界を作っています、そのほかエントランスホールや階段、また初めてのこころみとして美術館の玄関前と隣接する茶室松籟庵の庭にも1点ずつ吉川さんの作品が展示してあります。うすい水色の堅い磁器に梅雨空が映り、人の技と自然が見事に調和した風景が現れました。
 今回ご紹介する展示室3のインスタレーションでは6つの鉢と2つの壺が無造作に床に置かれ、壁面にはあたかも禅僧の墨跡を思わせる書が掛けられています。「人の心器・水滴」とイメージされた全体の構成から古代の神域のような気配が感じられます。「うつわ」はその言葉があらわすように中に「空ろ」を抱え込む「かたち」で人が作るあらゆる造形物の「原型」といってよいでしょう。この開かれた器をそれぞれの人の心に見立て、天上から落ちてくるものを待ち受けているようです。吉川さんの作品の大きな特徴は「動き」でしょう。9点からなるシンプルなインスタレーションは「天体‐人‐大地」の間に循環するおおきな運動を感じさせます。四季の自然の営為を想ってもよいのではないでしょうか。揺れ動くモノたちの中から新しい生命が芽吹く、そんな景色を見ました。

■企画展「陶思考 partII―わが思い、わが心の茅ヶ崎―吉川正道展」
会期:2011年4月29日(金・祝)〜6月12日(日)

(美術館 M.O )

< 略歴 >
1946(昭和21)年、高座郡寒川町に生まれ、小学4年生時に茅ヶ崎市に転居。茅ヶ崎市立茅ヶ崎小学校、同第一中学校、逗子開成高等学校に学び、1968(同38)年、日本デザイナー学院研究科卒。同年、愛知県常滑市の兼又陶園(現・陶房杉)に入社。1971(同46)年、朝日陶芸展優秀賞。翌年、常滑の陶芸家集団の一員としてヴァロリス国際陶芸ビエンナーレにて名誉大賞。1975(同50)年、独立。1981(同56)年、朝日陶芸展大賞。以降、朝日現代クラフト展グランプリ(83年)、ニヨン・ボースリントリエンナーレ第二席(92年)、ミュンヘン国際アート&クラフト展ゴールドメダル(98年)、札幌芸術の森クラフトコンクール優秀賞(99年)、出石トリエンナーレグランプリ(2000年)、京畿道世界陶芸ビエンナーレ国際公募展銅賞(01年)、ヴァロリス国際陶芸ビエンナーレ金賞(02年)、台湾国際陶芸ビエンナーレグランプリ(04年)など、国内外のコンクール等で受賞を重ねるとともに、内外各所の個展やグループ展で作品を発表。2005(平成17)年、中部国際空港エントランスロビーに陶壁と球体作品からなる「Water of life 渚(Migiwa)」を設置。翌年、愛知県芸術文化選奨受賞。2010年、宮城県栗原市の風の沢ギャラリーにて「陶思考 吉川正道展―帰園田居―」開催。