今月の1点 Monthly Pickup 11月
 
 

        
           開高健・山崎隆夫 合作

 “今われらは鏡もて見るごとく見るところ朧なり”




1974年頃、水彩・紙
52.0×52.0センチメートル
株式会社サン・アド蔵


“今われらは鏡もて見るごとく見るところ朧なり”
 

 今月21日から開催される生誕80周年記念開高健展で久し振りに披露される作品です。作家開高が茅ヶ崎の住人であったことから企画された展覧会ですが交友があった画家たちの作品も展示されます。
 山崎隆夫は開高との関係では最も重要な人物の一人です。茅ヶ崎で開高の隣人であったこともそうですが、そもそも大阪の寿屋(現・サントリー)で宣伝広告を担当する部署の上司だったのです。華やかで注目を集める最先端の宣伝広告の仕事に従事するのと並行して二人はそれぞれ画家として小説家として内面への道を歩み、深めていきました。
 この作品はそういう二人の合作として記念碑的な意味があります。開高のことばと山崎のドローイングが一枚の額に仕立てられている14点の連作の内の1枚です。互いを知りつくした二人の遊び心に満ち、またとてもマジメなやりとりが見どころです。
 このタイトルは聖書からとられていますが神の世界の完璧さに対し人の見る世界の不完全さをいうようです。青い地の紙に赤い線描が手探りするように人の顔らしきおぼろげな形態をつむぎ出しています。開高の辛辣なことばを年長者の山崎がユーモアで受け止めているようです。二人の心の交流を知る上でまたとない作品ではないでしょうか。

(美術館 M.O )

< 開高健(かいこう たけし)略歴 >
1930年、大阪生まれの小説家。大阪市立大学在学中に谷沢永一主宰の「えんぴつ」に参加。サントリー宣伝部でトリスの「〈人間〉らしくやりたいナ」などのコピーを手がける。『裸の王様』で芥川賞受賞。1974年茅ヶ崎に移住。1989年歿。現在、邸宅は開高健記念館として開設されている。

< 山崎隆夫(やまざき たかお)略歴 >
1905年、大阪生まれの洋画家。神戸師範学校在学中に小出楢重に師事。初期のサントリーの宣伝広告を開高健、柳原良平、山口瞳らと担当。1962年以降茅ヶ崎に居住し国画会などで活躍。1991年歿。2001年茅ヶ崎市美術館において回顧展開催。