今月の1点 Monthly Pickup 9月
 
 

        
           《音二郎胸像》 《貞奴胸像》


レオポルド・ベルンスタン( 1859−1939 )作


1900(明治33)年 ブロンズ彫刻 
高64.0センチ/幅39.0センチ 《音二郎胸像》
高68.5センチ/幅40.0センチ 《貞奴胸像》
成田山貞照寺蔵


《音二郎胸像》《貞奴胸像》
 

左:《音二郎胸像》、右:《貞奴胸像》

 今月の1点(2点)は9月10日から開催される企画展「川上音二郎・貞奴展」に出品される川上音二郎・貞奴夫妻の肖像彫刻をご紹介します。
 1900年パリ万博会場内の劇場に出演した川上夫妻は大変な反響を呼び、一躍人気者となりました。ピカソをはじめ多くの美術家が貞奴をモデルにしたのもこの時のことです。ロダンからモデルの依頼を受けた貞奴はスケジュールの都合から断ってしまいましたがパリで活躍するロシア出身の彫刻家ベルンスタンが夫妻の胸像をパリで制作しました。翌年完成した2体の彫刻は茅ヶ崎の自宅へ送られたのではないでしょうか。人気演目〈芸者と武士〉を演じる30代の夫妻の肖像です。2体とも二人の直筆のサインが刻まれています。貞奴が晩年まで手元に置き、現在は岐阜県鵜沼に自身が建立した貞照寺縁起館に保管されています。日本にもたらされた西洋彫刻として初期の例であるばかりでなく出来栄えの良さからいってももっと注目されてよい作品です。
 今回明らかになった事実として、パリのグレヴァン美術館で貞奴の蝋人形が展示されたことがあり、このベルンスタンの作品はその原型として使われたようです。
 明治の俳優をモデルにした彫刻の例としてラグーザの《日本の俳優(九代目市川團十郎)》、ロダン《花子のマスク》も今回の展覧会に出品されます。合わせてご鑑賞いただきたいと思います。

(美術館 M.O )

< 略歴 >
現在のラトビア生まれ。サンクトペテルブルクの美術学校に学んだ。1885年以降はパリを拠点に活動した。ニコライ2世、エミール・ゾラなどヨーロッパの各界名士の肖像彫刻を多く制作した。蝋人形館として知られるパリ・グレヴァン美術館の専属彫刻家として原型づくりに携わった。