今月の1点 Monthly Pickup 3月
 
 

        
                  椿花図


村上 華岳 (むらかみ かがく) ( 1888‐1939 )作

1924(大正13)年頃、絹本着色、額装、40.9センチ×51.7センチ
あいおいニッセイ同和損害保険株式会社所蔵


村上華岳《椿花図》
 

 3月27日まで開催中のあいおいニッセイ同和損害保険株式会社所蔵コレクションによる「椿咲く―絵画と工芸―」展からの1点です。
 園芸好きの日本人にとって椿は特別のお花でしょう。江戸時代からたくさんの品種がつくられてきました。お茶席に合うのは小ぶりで筒咲きの侘助とよばれるグループでしょうか。暗い茶室では冬から春先まで一輪でも、かたい蕾でも存在感を発揮する大事な花木です。しかし華岳の椿に漂う不思議な気配はわびさびとは違うようです。八重咲きで暗紅色、血の色の椿が群れて咲いています。といっても西洋風の花束でもありません。椿の美術作品の見どころは鮮やかな花弁と深緑色の葉っぱとのコントラストにあるのかもしれませんがここでは花も葉もわずかに墨色を含んでひとしく透明な影の中に沈んで見えます。晩年の華岳が得意とした山水や仏画、牡丹の花にも共通することですが、画面にみなぎる異様な雰囲気の中でさまざまに対立するものが融け合いひとつになっていくようです。
 茅ヶ崎市美術館からほど遠くない氷室椿庭園では珍しい品種がこれから見頃をむかえます。どうぞ美術作品鑑賞と合わせた散歩コースをお楽しみください。

(美術館 M.O )

< 略歴 >
大正期、関西を中心に活動した日本画家。京都市立絵画専門学校の同窓生土田麦僊、榊原紫峰らと設立した国画創作協会で日本画の革新をめざした。代表作に東京国立近代美術館の《日高河清姫図》など。