今月の1点 Monthly Pickup 1月
 
 

        
             おしくらまんじゅう(A)


菅野 陽 (すがの よう) ( 1919‐1995 )作


1957年、銅版・紙、32.6センチ×48.2センチ


おしくらまんじゅう(A)
 

 おしくらまんじゅう
 押されて泣くな

 おしくらまんじゅうと聞いて子供の頃を懐かしく思い出す人もいるでしょう。何人か集まって背中合わせに腕を組み、円陣を作って上記のように声を上げつつ好きなように押し合いへし合い、気が付けばいつの間にか身体がぽかぽか温かくなっているという、寒い季節の定番の遊びの一つです。ただ定番と言っても、現在の子供たちにはあまり馴染みがないかもしれません。
 地面に描いた円から出てはいけない、倒れてもいけない、円陣の内側にも人が入る等々、遊び方もいろいろ。寒空の下、始めのうちはちょっと痛かったり窮屈だったり、少々不思議な遊びと感じるかもしれませんが、身体が温まってくると理屈抜きに楽しくなってきます。
 菅野陽は、日本の銅版画研究において先駆的な役割を果たした人物です。銅版画の歴史、制作技術、表現方法など様々に研究を重ね、その成果は著書や作品を通して後進に引き継がれました。
 子供を題材にした作品は多く、本作では、対象の姿形をいったん線の状態に解いて再構築したかのような造形の面白さに加え、何処かユーモラスで微笑ましい印象を与える表現に「子供」に対する菅野の温かな感情を窺うことが出来ます。
 笑顔でぎゅうぎゅうまんじゅうを押す子供たち、なかには歯を食いしばっているように見える子も。元気な足の直線・曲線、浮く踵・つま先、しっかりと組まれた腕が、何処にどんな風に力が入っているかを教えてくれます。
 身体にも心にも温かさを与えてくれる冬の風物詩「おしくらまんじゅう」、画面の外でも文化の一つとして継承されていくと良いのですが。
 この作品は、常設展「冬季収蔵作品展」(1/23-2/13)にて展示されています。

(美術館 J.K )

< 略歴 >
1919年台湾生まれ、東京育ち。慶応義塾大学を中退し、39年に東京美術学校(現・東京藝術大学)日本画科に入学。油画科の一年上級に駒井哲郎がいた。43年、応召による繰り上げ卒業。54年、関野準一郎主宰の銅版画研究所で銅版画の手ほどきを受け、以後銅版画の制作にのめり込む。また、創作活動のみならず銅版画研究にも力を尽くし、著書に『銅版画の技法』(62年)『日本銅版画の研究 近世』(74年)等がある。95年、茅ヶ崎の自宅で逝去。