今月の1点 Monthly Pickup 5月
 
 

        
                     「 飛翔 」


水越 茅村 (みずこし ぼうそん) ( 1914‐1985 )作

1981年、墨・紙、六曲一隻、177.3×369.0センチ
茅ヶ崎市蔵


水越茅村《飛翔》
 

 作者の水越茅村は1970(昭和45)年、市立鶴嶺中学校校長を最後に、30年以上携わった学校教育の場から離れました。同年、茅村は自らが主宰する書塾・茅花書芸院を設立、書の世界のさらなる探究と後進の指導の拠点としました。
 三年後の1973(昭和48)年に第1回茅花書展を平塚市内の画廊でひらき、以降同所で研究活動の成果を発表していましたが、1980(同55)年10月に市民文化会館が完成すると、翌年の第9回展以降は同館展示室をその会場としました。
 この作品は、その第9回茅花書展に出品されたものです。
一門を率いる総帥として、前年までにくらべて格段に広くなった会場に相応しい大作、しかも仕立てもめでたき金屛風。
 おそらく茅村はこのときを我が茅花書芸院の発展の機会ととらえ、また、なお一層の飛翔を期して、制作にとりくみ、そして発表したのではないでしょうか。
 渾身の力をこめながらも、おおらかでゆとりをかんじさせる筆勢。茅村作品のひとつの頂点ともいうべきこの作品は、展覧会終了後、作者自身により茅ヶ崎市に寄贈されました。
 この作品は、6月13日まで美術館で開催している「藤沢市・茅ヶ崎市・寒川町収蔵作品展」で展示しています。

(美術館 N.Y )

〈 略歴 〉
1914(大正3)年、現在の茅ヶ崎市高田に生まれる。本名・咲七。1936(昭和11)年、神奈川県師範学校(現・横浜国立大学)を卒業、茅ヶ崎町立(現・市立)鶴嶺小学校に奉職。翌年、高橋竹村に師事。同門の渋谷竹径・星野柳泉と〈竹村門下の三羽烏〉と称される。1949(昭和24)年より上田桑鳩の教えも受ける1950(昭和25)年、竹村門下による照心書道会創立に同人・理事として参加、翌51(同26)年には桑鳩主宰の奎星会発足に際し第一次会員となる。1959(昭和34)年、第2回毎日前衛書展に「十清九濁」を出品、毎日大賞を受賞。1970(昭和45)年、書塾・茅花書芸院を設立。のち、照心書道会会長、同顧問、奎星会副会長、参与などを歴任。教職歴は鶴嶺小学校教員についで横浜市立三吉小学校教員、茅ヶ崎町立(現・市立)松林小学校教員、茅ヶ崎市立松浪小学校教頭、同茅ヶ崎小学校教頭、藤沢市立辻堂小学校校長、茅ヶ崎市立鶴嶺小学校校長を務めた。
1985(昭和60)年9月30日、胃癌のため逝去。