今月の1点 Monthly Pickup 12月
 
 

        
       「 森−下向きに生える100の麟角 」


留守 玲 (るす あき) ( 1976‐   )作

2006年、鉄・熔接、熔断、鍛金
170.0×320.0×182.0センチメートル
  個人蔵


森−下向きに生える100の麟角
 

撮影:末正真礼生

 「PIANISSIMO 田中みぎわ/留守玲 展 −冬の浜辺から−」展(12月13日〜2010年2月14日)に出品される大作です。鉄で出来ています。何に見えますか?かたい甲羅で覆われた龍のようですし、千年も前からそこにある岩のようでもあります。作者の付けたタイトルから察すると森のイメージもあるようです。深い迷路のような森でしょうか。
 鉄の粗々しい肌には生き物を連想させる何か、温度のようなものを感じます。火に熔かされて液体状になったものが冷えて固まるという変化の不思議さも金属独自の性質です。この作品は無数の小さな断片から出来ています。作者は鍛金の技法を学びましたが、それだけでなく鉄を熔かし、滴のように落ちて固まった断片を熔接していく独自の技法を編み出しました。作者と素材との長い対話あるいは格闘の軌跡がそのまま作品になっているといえるかもしれません。
 展覧会場ではもう一人の作家、田中みぎわさんの水墨による平面作品とのコラボレーションが見られます。異なった表現方法による二人の作品がそれぞれ個性的な風景を生み出しているのですが両者の間に小さな響きが生まれ、大きなうねりになっていくのを聴きとっていただけるのではないでしょうか。美術館から歩いて15分ほどの冬の浜辺を訪れるのはいかがですか?冬の浜辺も今回の展覧会の背景の一部です。

(美術館 M.O )

< 略歴 >
1976年宮城県生まれ、多摩美術大学大学院美術研究科デザイン専攻修了。鉄を素材とする造形作家として注目され、現代美術と工芸の二つの領域で近年目覚ましい活躍をしている。