今月の1点 Monthly Pickup 11月
 
 

        
                「 光る海 」


入江 観 (いりえ かん) ( 1935‐   )作

1989年、油彩・キャンバス
80.3×116.7センチメートル


入江観《光る海》
 

 作者の入江さんは、いつどこから来るのかがわからない風景からの呼び声に耳をとめ、それに応えるように風景を描くといいます。
 もちろんその「呼び声」は誰にでも聞きとれるものではなく、入江さん自身も長い時間をかけて風景からの呼びかけを辛抱強く待ちつづけました。そして「他人から、『こんな所を絵にするの?』と言われるような、何の変哲もないような風景の中からさえ呼び声を聞くことが出来るようになった」と述べています(1)。
 入江さんはまた、こうも記しています(2)。
     もともと、茅ヶ崎の海は、沖に烏帽子岩が見えるほかには、何の特
    徴もない砂浜が東西に広がっているだけである。その何ということのな
    さが私は気に入っている。何の仕掛けもない舞台であるから、そこに
    現われる自然や人の動きがドラマになる。
 この作品に描かれた風景もあまりにもなにげなく、また、さりげなく私たちの身近に存在し、私たちもまたこの風景になれ親しんでいます。
 しかし、風景からの呼び声を聞くことができる画家は、この風景にドラマをみいだし、ひとつの作品に昇華させるのです。

(1) 「私の風景」2005年11月号『一枚の絵』(連載「絵を描く心」)より
(2) 「茅ヶ崎の海」1984年1月10日付『日本経済新聞』(連載「プロムナード」)より
*(1),(2)とも入江観・著『獨歩青天』※(形文社2008年発行)所収

(美術館 N.Y )

1935(昭和10)年、現在の栃木県日光市に生まれる。1953(昭和28)年、東京藝術大学美術学部藝術学科入学、加山四郎に学ぶ。57(同32)年、同校卒、在学中の56(同31)年に春陽会展に初入選。60(同35)年、春陽会賞受賞。62(同37)年、フランス政府給費留学生として渡仏、同国立高等美術学校モーリス・ブリアンション教室に入学。翌年、サロン・ドートンヌ入選。64(同39)年、帰国。春陽会会員となる。安井賞候補新人展に選抜出品。女子美術短期大学非常勤講師となる。67(同42)年、女子美術大学茅ヶ崎校舎開校に伴い同短期大学専任講師となり市内甘沼に転居。69(同44)年、安井賞展に推薦出品。76(同51)年、茅ヶ崎市東海岸南に住居・アトリエを新築、転居。この頃から中川一政の薫陶をうけ、以降内外の旅行を共にする。96(平成8)年、宮本三郎賞受賞。2004(同16)年、茅ヶ崎市美術館・小杉放菴記念日光美術館にて「蒼天の画家 入江観の世界展」開催。08(同20)年、諏訪市美術館にて「入江観の世界展・獨歩青天」※
現在、春陽会会員、日本美術連盟理事、女子美術大学名誉教授、日本中国文化交流協会常任理事。

※獨歩青天の「青」字は画面上正しく表示できないため
  常用漢字で表記しました。
  正しい字は「青」の「月」の部分が「円」になります。