今月の1点 Monthly Pickup 9月
 
 

                 
                   「 牛 」


鈴木 至夫 (すずき のりお) ( 1929‐   )作

1956年、紙本着色、141.0センチ×203.0センチ
平塚市美術館蔵


牛
 

 画面いっぱいに描かれた三頭の成牛と手前に配された一頭の仔牛。四頭ともがおなじ方向をむき、その姿を真横からとらえることで、脚や頭部がかさなり、まるで騙し絵のようにみえるところもあります。しかし全体的には簡潔な表現でありながら、牛の量感を巧みにとらえており、作者がはやくからすぐれた描写力をもっていたことをしめしています。
 また、彩色は初期の鈴木作品にみられる薄塗りで、黒毛や角(つの)の部分には、「たらしこみ」の技法がもちいられています。
 1954年に東京藝術大学日本画科を卒業した作者は、初入選となる同年から二年連続して日本美術院展覧会(院展)に入選をはたしています。この作品が描かれた年には前田青邨(せいそん)の画塾・恵下会(けいかかい)に入門しており、美術教師との二足の草鞋でしたが、充実した制作活動がはじめられた時期の作品といえるでしょう。

 企画展「S氏のコレクション―日本画の名品を中心に―」(9月14日〜11月9日)に展示される本作は、湘南在住の美術コレクターより平塚市美術館に寄贈された作品です。

(美術館 N.Y )

< 略歴 >
 現在の茅ヶ崎市幸町に生まれる。茅ヶ崎小学校では浮田克躬(洋画家・故人)、森治郎(茅ヶ崎美術家協会相談役・水彩連盟理事)と同級。1949年、三橋兄弟治(いとじ)らと茅ヶ崎美術家協会の前身・茅ヶ崎美術クラブを結成。2000年には茅ヶ崎市美術館で「画業五〇年 鈴木至夫展」が開催された。現在、日本美術院特待。