今月の1点 Monthly Pickup 3月
 
 

                 
                   「 痕 」


土井 俊泰 (どい としやす) ( 1918‐2012 )作

1966年、油彩・紙粘土・板
162.5センチ×130.5センチ


痕
 

 まるでクレーターのような部分は、紙粘土を塗った板を壁にたて掛け、そこに丸めた紙粘土を力いっぱい投げつけることによりつくられています。
 1950年代半ばから60年代にかけて、美術の世界には抽象の嵐が吹き荒れました。
土井俊泰も、その渦中にあった画家のひとりでした。彼はこの時期、日本の伝統的な意匠を取込んだ作品や、白いキャンバスに朱やアイボリー、藍などの色彩が繊細な描線とともに蠢(うごめ)くようにうねる作品を描いているほか、ついにはこの作品のように絵筆をもちいて「描く」という行為によらない作品まで制作しています。
 その後、1967年の渡欧を契機にふたたび具象絵画に回帰した作者は、写実的傾向のつよい時期をへて、次第に情感的な心象風景ともいうべき独自の絵画世界を確立してゆきます。
 この作品は3月15日(土)から開催する常設展「収蔵作品展」に展示されています。

(美術館 N.Y )

< 略歴 >
静岡県伊東に生まれる。1950年、菅野圭介に師事、翌年の初入選以降、独立展に出品。59年、茅ヶ崎市に転入。61年、独立美術協会会員に推挙される。68年、安井賞候補新人展に「聖苑」が選抜出品される。96年独立美術協会功労賞受賞。99年、市美術館にて「土井俊泰の画業」展が開催される。