今月の1点 Monthly Pickup 11月
 
 

「川のほとり 」
入江 観 (いりえ かん) (1935-  )作

1980(昭和55)年, 油彩・カンヴァス P80号



 茅ヶ崎には、この土地に根ざした作品をいろいろと手がけられている美術家が多数お住まいである。ここで紹介する入江観氏もそのひとりで、茅ヶ崎をこよなく愛し、身近な海と砂浜、野の樹々、山や川、そして“蒼天”の空を描いてやまないばかりでなく、その景観美を日本のみならず海外にまで発信されていることでも知られる。セザンヌ研究に端を発した氏の絵画は、それ自体きわめてモダンであり、その突き抜ける空の青も、ともするとマグリット的シュールリアリズムとの近接を指摘されたりもする。しかし、茅ヶ崎の海や空に日常慣れ親しんでいる市民には、それはごく当たり前の風景のどこかであり、その一部を暖かな眼差しで切り取り、精神の深奥にそっと問いかけつつ純化した姿がうかがえる。この作品も、小出川かとおもわれるコンクリートの川岸を描いたものだが、ゆったりと流れる川の向こうの樹々や草叢、プレハブ小屋、電柱、そして青い空等々の表現には、明るく澄んでなお潤いのある空気が読みとれる。ところで、左手前の自転車は氏のスケッチ用の愛車だろうか。
(K・A )


< 入江 観(いりえ・かん)略歴 >
 1935(昭和10)年栃木県日光の生まれ。1957年東京芸術大学美術学部芸術学科卒業。卒論「セザンヌの<カルタ遊びをする人々>の連作」。在学中から春陽会に出品、1960年春陽会第37回展で春陽会賞受賞。1967年女子美術大学茅ヶ崎校舎開校にともない茅ヶ崎市甘沼に居住。1971年第6回昭和会で優秀賞を受賞。1987年女子美術短期大学部長。1996(平成8)年第14回宮本三郎賞受賞。2000(平成12)年女子美術大学名誉教授および女子美術大学附属高校・中学校長となる。