今月の1点 Monthly Pickup 10月
 
 

ハッピー・バースデー 」
松本千鶴(まつもと ちづる)

2006年, 透明水彩・紙  個人蔵



 松本氏は身近な草花を愛しみ、日常見過ごしがちな野草も丁寧に観察して、透明水彩により描きとどめています。四季折々の植物の姿をありのままに描き写した作品からは、小さな命の息づかいが感じとれます。
 美術館では、11月12日(日)まで「松本千鶴 草花に想いをよせて」展を開催しています。この作品はその中の1点です。今回の展覧会には松本氏の植物画50点を中心に、その生徒81人にも1人1点ずつバラの絵を描いて出品していただいています。
 美術館が建つ高砂緑地は、かつて地元の人から「原別荘」と呼ばれて親しまれていました。昭和のはじめ、高砂通りを歩くと別荘の垣根にはたくさんのバラが咲き誇り、バラの間から洋館が見える様子は、おとぎ話のような光景だったといいます。松本氏も子供の頃にその原別荘の横を毎日歩いて茅ヶ崎小学校に通ったそうです。この懐かしい想い出話がきっかけになり、今回の展覧会は実現しました。このほんのりピンクに染まった清楚なハッピー・バースデーには、彼女の幼い頃の思いが込められているかのようです。
(Y・I )


< 松本千鶴(まつもと・ちづる)略歴 >
 1951年東京生まれ。茅ヶ崎小学校を63年に卒業。75年には、東京芸術大学美術学部芸術学科を卒業。87年からは、朝日カルチャーセンターで故・佐藤広喜氏に植物画を学ぶ。97年より個展を開く。現在は、平塚の自宅や大磯、藤沢で植物画教室の講師を務める。