今月の1点 Monthly Pickup 5月
 
 

「船とバンガロー」
森 治郎 (もり じろう) (1929-  )作

1990(平成2)年, 水彩・紙 /額装,41.0×60.6cm



  絵画作品の中に今日ではすでに失われてしまった風景を見いだすことがしばしばあります。この作品の右奥に描かれたバンガローも、今では懐かしい風景のひとつではないでしょうか。
  浜に引き揚げられ、あたかもからだを横たえているかのような漁船や、干された網は、海に生きる人たちのつかの間の休息を暗示しているようにも見えます。
  1960年代半ばに抽象表現による作品で新生面を切り開いた作者は、現在に至るまで、日本的感性を根本とした抽象画制作を続けています。その一方で、この作品のように身近な風景や、海外の風景も数多く描いています。対象を素直にとらえた、やわらかく、うるおいにみちた風景画作品は、見る者が身構えることなく向き合える親しみやすさが特徴といえるでしょう。
(Y・N )


< 森 治郎 (もり・じろう )略歴 >
南湖中町に生まれる。茅ヶ崎小学校では浮田克躬(洋画家・故人)、鈴木至夫(日本画家・日本美術院特待)と同級。三橋兄弟治に師事。1954年、創元会展に初入選。翌年より水彩連盟展に出品し、1961年には会員に推挙される。同展出品作により小堀進賞(1980年)、文部大臣奨励賞(1988年)を受賞。茅ヶ崎美術家協会前会長。現在、水彩連盟理事。