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「 松島屏風 」
萬 鐵五郎 (よろず てつごろう) ( 1885-1927 )作

1918年、油彩・キャンバス、127.3×145.5cm、
個人蔵


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 中央にいくつもの洞門をもつ大きな島を配し、向かって左側の上隅と同右側の下方には小さな島をそれぞれ描く。漁を終えての帰還だろうか、帆掛け舟が左下と右上に2槽、左斜め下方の岸辺へと向かっている。萬の作品としてはかなりの大作であるこの絵は、<松島屏風習作>(岩手県立美術館所蔵)と比べると、海の青が淡くキャンバス地が透けてみえるほどで、落款(らっかん)の位置も赤い短冊形のみという未完成のような現状を呈する。
また、習作には碁盤の目が引いてあり、それを拡大したと見ると多くの差異も認められるなど、制作にあたってのさまざまな心理的葛藤をも想わせる。ところで、日本三景の松島は小さな湾の背後に切り立った山並をもち、そこから多数の島々を眺めることができるが、実は、本図とピッタリの景観展望の場所は存在しない。この絵は俯瞰(ふかん)構図と呼ばれるもので、19世紀後半以降、フランスの画家たち(例えばシスレーやドガなど)が好んで用いた手法である。しかし、これほどまで極端な俯瞰というより鳥瞰の構図は、雪舟の<天橋立図>に明らかなように東洋山水画に起源する。萬はこのころから、次第に東洋の古画に傾倒するようになるのである。

 この作品は、2007年1月20日(土)から開催される企画展「歿後八〇年 萬鐵五郎〜東京/土沢/茅ヶ崎〜」で展示されます。
(美術館 K.A )


< 萬 鐵五郎(よろず・てつごろう)略歴 >
 岩手県生まれ。美術学校卒業後フュウザン会に参加。後期印象派やフォーヴィスム、キュビスムなど常に新たな絵画思考を探求、自己の表現として作品に具体化する。1918年から茅ヶ崎の南湖に住み、1927(昭和2)年5月同地で歿。