今月の1点 Monthly Pickup 6月
 
 

「 ひなげし 」
馬渕 聖 (まぶち とおる) (1920〜1994)作

1973年, 木版(多色)・紙 , 42.5cm× 27.4cm



  ひなげしはわたしたちの身近に咲く可憐な花です。作者はポピーとも呼ばれるこの花を把手のついた水差しに活け、葉のついた柚子とチェック柄のテーブルクロスを配してリズム感のある画面を構成しています。それだけが平面的に、まるで影絵のようにあらわされている水差しが全体を引き締めています。
  この花にはもう一つ「虞美人草(ぐびじんそう)」という別名もあります。
虞美人とは古代中国の国家・秦(しん)を滅ぼした英雄・項羽(こうう)が愛した女性の呼び名です。項羽は漢の劉邦(りゅうほう)と天下を争いますが紀元前202年の垓下(がいか)の戦いで敗死します。このとき虞美人もまた死を選んだという伝説があり、彼女の血が滴った土、もしくは彼女の墳墓にこの花が咲いたことから名づけられたということです。