今月の1点 Monthly Pickup 4月
 
 

「春卓」
馬渕 聖(まぶち とおる) (1920-1994)作

1964年,木版画,40.5×54.5cm



 幾何学形に刻まれたたくさんの薄い板片を礎となる板に張り付け、一枚の木版画を生み出すのに必要な何枚もの版木の一つとして用いている。画面にモザイク画の趣をもたらすそれは、「油絵に力負けしない版画」を目指した作者が晩年までこだわり、研究を重ねた手法だった。
  画面中央、花瓶に生けられたチューリップは頭を垂れ、ケシは花片をひとひら散らせている。だが明快な色面で描かれたそれらを縁取るきらきらとしたモザイク様の光は、終えんを迎えつつもなお輝く、生命の光そのものであるかのようだ。