今月の1点 Monthly Pickup 8月
 
 

「芹沢の石佛 夏の野佛」
馬渕 録太郎 (1890−1992)作

1972年,木版画, 9.0センチ×8.3センチ



  緻密に、繊細に、小さな画面を埋めるようにして描き込まれたとりどりの草花と、それらに囲まれ中央に鎮座する老婆の石像。愛らしくも堅実なその線の、生き生きとした細やかさは木口木版の魅力を十二分に伝えてくれる。露草の対の青い花弁など、ごくわずかに施された彩色がまた楽しい。
  作者は晩年芹沢に住み、周辺の風景などに題材を求めた。この老婆の像は、実際に芹沢で確認されている石仏の一つ、ギャーギャー婆さん(風邪の神)(※)を描いたものではないかと思われる。

参考…『小出の石仏』(1997年/ピエーデ・クルーボ著/茅ヶ崎市教育委員会発行)