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今月の1点 Monthly Pickup 6月

《いしのこえ》 MATHRAX(マスラックス)〔久世祥三+坂本茉里子〕(くぜしょうぞう+さかもとまりこ)

2016(平成28)年 可変式 茅ヶ崎の海辺の石、木、電子回路、スピーカー《作家蔵》

 

isinokoe01.jpg                                                                                                      Poto:KENJI KAGAWA

3つの木の台に置かれた石に、人がそっと触れると軽やかな音が聴こえてくるのが、この茅ヶ崎の地で、子どもたちとアーティストとの出会いにより生みだされた作品「いしのこえ」です。そして、本作は昨年、触覚に基づく新たな優れた作品におくられる「HAPTIC DESIGN AWARD 2017」で世界20カ国、117点の応募作品の中から優秀作品に選ばれました。

皆さんは“グランドファーザー”と呼ばれたある一人のネイティブアメリカンの話をご存知でしょうか。何冊かの書籍も発行され、今でも多くの人を魅了している青年の話です。彼が厳しい自然の中で生き延びるための修行を続け、動物の声や石の声が聴けるようになったという話からインスピレーションを得て本作は作られました。

2016年5月、マスラックスの二人は、茅ヶ崎市立松林中学校と茅ヶ崎市立西浜中学校の美術部の生徒とともに、茅ヶ崎の海に行きました。そこで、生徒たちと石を見つけ、一人一人が手にした石を観察し、その石の声を聴く方法を考える電子工作ワークショップ「石の声を聴くにはどうしたらいいだろう?」を行いました。

色々な方法を皆で考えた後、マスラックスが制作に用いている電気を石にまとわせ、石に触れると照明が点灯したり、パソコンの画面のグラフが変化したり、音が発せられるという方法を体験しました。本作も同じく、人が石に触れることで石と地球が電気でつながることを利用して音が発せられるしくみになっています。

この中学生とのワークショップには、もう一つマスラックスの久世が千葉で森の達人と一緒に森を歩いたときの体験も関係しています。その森の達人は、一般の人には見えない動物の足跡を見つけ、動物がどちらの方向へ行ったのかが分かったのです。さらに驚くべき事に、その動物が妊娠しているかどうかも足跡のくぼみ1つから分かったといいます。

森の達人の技に驚いた久世は、森で修行をすることは難しいけれど自分たちが持っている電気を扱う技術で、森の達人やグランドファーザーのようなことが出来ないかと考えました。

見えないもの、聴こえないものを捉えようとする力を、マスラックスは「感性」だと言います。そして、今回は触れるという行為を通して感性を呼び起こし、あらゆる情報にあふれる世の中で、どのように自分の感性を使って世界を見つけ出すかが、この作品の大きなテーマとなっています。

 

※この作品は特別展「いしのこえ」(会期:2018年5月20日(日)~7月1日(日)で展示されています。

 

(美術館 H.F) 

 

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