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《マドンナ》 岡 耕介(おか・こうすけ 1948~)

(読み方:まどんな)
2010年代 金属 高22.0 (cm) 《個人蔵》

 madonna.jpg

 

「絵は三次元の物(立体)を平面(二次元)に置きかえること。」
「彫刻(立体作品)は上下左右縦横斜め、どの方向からみても完成していないといけない。」
岡 耕介さんは絵を描くときと立体作品をつくるときは、全く違う思考でとりくんでいるといいます。
まるで岡 耕介さんのなかに、ふたりの作家がいるようです。
そう、岡さんのなかにいる、もうひとりの作家が、球田(きゅうだ)タカオさんです。
球田さんが、使い終わった絵具のチューブにハサミをいれて残った絵具を取り去り、カッターやハサミなどで手足(または、脚)を細工して、それぞれにふさわしい場に固定すると、「TUBISM(チュービズム)」と彼が呼ぶ、小さな立体作品が完成します。
2011(平成23)年に神奈川県美術展に出品した、杖を持ち先頭を歩く男の後ろに5人の人物がすがるように続く立体作品「群盲」は奨励賞を獲得ました。
美術評論家・北澤憲昭氏は審査講評で次のように記しています。

《群盲》は絵具のチューブで造った小さな一列の群像で、ピーテル・ブリューゲルの《濃人の寓話》を想い起こさせる。大小のチューブを人体に見立ててアレンジメントする手際はすばらしく、じつに機智に富んだ小品である。立体にせよ平面にせよ、とかくサイズの大きなものが眼を惹きがちな審査の盲点を突く見事な“大作”であったと評したい。(『第47回神奈川県美術展』図録、神奈川県美術展委員会、2011年)


この作品も「TUBISM」のなかの一点です。
タイトルの「マドンナ」は、「私の貴婦人」を意味するイタリア語の「ma donna」が語源です。そこから派生して、聖母マリアや幼いイエス・キリストを抱いた聖母像のこと、さらには夏目漱石の「坊ちゃん」や「男はつらいよ」シリーズに登場するような、憧れの女性を指す言葉でもあります。
幼子を左手に抱き、ふたりの子供をかばうように立つ「マドンナ」。
その立ち姿には毅然とした美しさがあります。同時に聖母像につながる慈愛をも感じられないでしょうか。
ちなみに、彼女の身体に使われているのは、キャンバスに絵を描く前に下塗りに用いるファンデーション アンバー(褐色)、幼子はコバルト グリーン(やや淡い緑)、ふたりの子はローズ マダー(紫がかった赤)とテール ベルト(深い緑色)のチューブが使われています。

この作品は2018(平成30)年2月4日まで開催中の企画展「岡 耕介展 TUMBLING DICE」に展示しています。

 

(美術館 N.Y) 

<略歴 >

神奈川県横浜市に生まれる。1968(昭和43)年、多摩美術大学に入学(美術学部油画専攻)。1972(昭和47)年、大学中退。看板店、生花店、デザイン会社に勤めるかたわら絵画制作を継続。1973(昭和48)年、個展開催。以降、80(昭和55)年、89(平成元)年、2005(同7)年、07(同19)年、10(同22)年、15(同27)年に個展を、1986(昭和61)年、2002(平成14)年、12(同24)年にグループ展を開催。1978(昭和53)年、渡欧。約一年スペインに滞在。1981(昭和56)年、茅ヶ崎市に移住。この頃、鶴田猛が指導するデッサン講座に参加する。鶴田の勧めにより1989(平成元)年より茅ヶ崎美術家協会展に出品。1991(平成3)年、茅ヶ崎美術家協会会員に推挙される。2001(平成13)年、茅ヶ崎市民ギャラリーにて「岡耕介油画展」を開催。2011(平成23)年、絵具のチューブを利用した立体作品「群盲」を神奈川県美術展に出品し奨励賞を受賞。2017(平成29)年、茅ヶ崎市美術館にて企画展「岡耕介展 TUMBLING DICE」が開催される。

 

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