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今月の1点 Monthly Pickup 9月

《ナ カラウヌ メ ナ カヒリ(王冠とカヒリ)》 制作者不詳

木綿、平織り、アップリケとキルト(輪郭縫いキルト) 190.5×190.5㎝
トーマス・D・キングJr.夫人寄贈 1973(4182.1)

Na Kalaunu me na Kähili (Crowns and Kähili) Unidentified Maker
Island of Kaua‘i, 1886
Cotton, plain weave, appliquéd and quilted (contour quilting)
75″×75″
Gift of Mrs. Thomas D. King, Jr., 1973 (4182.1)

Photo: Shuzo Uemoto
Organized in collaboration with the Honolulu Museum of Art

 NaKalaunu.jpg

 

茅ヶ崎市美術館では、茅ヶ崎市制施行70周年とホノルル市・郡姉妹都市締結3周年を記念した展覧会「ホノルル美術館所蔵ハワイアンキルト展 Across The Ocean」を11月5日(日)まで開催している。同展ではホノルル美術館所蔵のハワイアンキルト20点を一堂に展覧する国内初の試みであり、本場ハワイでもこれほどの規模の作品群を間近に見ることが出来る機会は滅多にない。
日本初公開作品が3点、ホノルル美術館の展示室でも展示したことがない、実質的な世界初公開作品が1点含まれている。
この展覧会のポスターやリーフレット等の広報紙や展覧会図録に共通して用いたのが、今回紹介する《ナ カラウヌ メ ナ カヒリ(王冠とカヒリ)》である。

一目見た時に受ける印象の強さは、今回展示している作品のうちでも五本の指に入ると個人的には考えている。
赤とやや黄色みを帯びた白との組み合わせはシンプルでありかつ力強い。また、ハワイの王族が用いた儀式用の羽根飾りの杖(カヒリ)を単純化して交差させ、王冠をその根元に配しているモチーフから、ハワイ王朝を題材とした由緒正しいキルトであることを示している。このキルトが兼ね備えるそうした素朴さと力強さと気品さは、ハワイに昔から暮らしてきたネイティブ・ハワイアンの感性に相通じるものがあるのではないだろうか。
ちなみにハワイの王族が好んだ色は赤で、特に「ターキーレッド」の布を輸入することが多かったようだ(かつてハワイでは布の生産は行われなかった)。
古いハワイアンキルトにターキーレッドが用いられる例は少なくない。また、現代の私たちが、ハワイアンキルトが持つ典型的な特徴と捉えている、上下左右対称モチーフのアップリケ・キルティングであり、キルティングはモチーフの輪郭に沿って繰り返される伝統的なコントア(輪郭)・キルティングである(エコー・キルティングとも呼ばれる)。
このキルトについてホノルル美術館の学芸員サラ・オカ氏は解説文を寄稿してくれている(展覧会図録に掲載)。以下に要約・抜粋してみよう。

-カラカウア王は1883年の戴冠式のために王冠を注文した。
このキルトの裏面に「1886」と書かれているがより古い「カメハメハ4世の王冠と交差させたカヒリ」と呼ばれる暗褐色・白色のキルトを写したもののようだ。
元となったキルトは1933年、カウアイ島のモキハナクラブで開催された最初のハワイアンキルト展で展示され写真も残っている。このキルトは宣教師のマリー=ソフィア・ハイド・ライス夫人(1816‒1911)への贈り物として制作されたものではないかと考えられている。彼女の夫ウィリアム=ハリスン・ライスは1841年に設立された宣教師の子供たちの学校で教え、寮母であった夫人はマザーライスとして慕われていた。ライス夫人は低学年の子どもたちを教えながら家事や子どもたちの衣服の世話に忙しかった。彼女については、針仕事は嫌いだが縫い針を手放すことはなかったとも書かれている-

一般に、およそ2000時間を費やしてハワイアンキルトは作られるという。見ることが出来ない贈り手の愛情や感謝の気持ちが、まるで気体が結晶化するように時間をかけて具現化されたものがハワイアンキルトとも言えるだろう。

※このキルト作品は11月5日(日)まで茅ヶ崎市美術館で開催中している企画展「茅ヶ崎市制施行70周年 ホノルル市・郡姉妹都市締結3周年記念 ホノルル美術館所蔵ハワイアンキルト展 Across The Ocean」に展示されています。

 

(美術館 T.T) 

 

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