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今月の1点 Monthly Pickup 7月

《鳩のくる窓》 土井 俊泰(どい・としやす 1918~2012)

(読み方:はとのくるまど)
1995(平成7)年 油彩・キャンバス 縦53.0×横45.5(cm) 《茅ヶ崎市美術館蔵》

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いつもの窓辺に、いつもくる鳩でしょうか。
それとも、制作中のつかの間の休息のひととき、ふと目をやった視線の先に舞い降りた来訪者なのでしょうか。
もしかしたらそこに鳩はおらず、ただ窓だけがあり、鳩は作者の意識の中にだけ存在しているのかもしれません。

作者は戦場に赴く船中で発病し、10年を超す入院生活を経た1949(昭和24)年に故郷・伊東に帰り着いています。
一方、前年7月に三岸節子との同居を前提としない結婚を発表して「別居結婚」とマスコミを騒がせた独立美術協会の画家・菅野圭介が伊東に移り住んだのも同じ年のことでした。

菅野に師事した土井俊泰は、その当初、師の画風を素直になぞるような作品を描いていました。やがて抽象画の時代を超えて具象に戻り、自己の世界を確立しました。

作者が恩師・菅野圭介と出会って40年以上のちに描かれたこの作品を前にすると、師から受け取り感銘を受けた「物を見るな、対象に引きずられるな」という言葉を守り、制作を続けてきたことがうかがえます。と同時に、その色彩や単純化された形態などに、師・菅野からの影響を感じざるを得ません。

この作品は8月31日まで開催中の企画展「夏の福袋2017 動物美術館」にて展示しています。

(美術館 N.Y)

<略歴 >

静岡県田方郡伊東町(現・伊東市)に生まれる。1939(昭和14)年、応召。1941(昭和16)年、帰国。静岡県の天竜で療養、1949(昭和24)年に帰郷し、独立美術協会会員の菅野圭介と出会い、1950(昭和25)年に師事。翌年、独立展に初入選、以後毎年入選。1959(昭和34)年、茅ヶ崎市に転居。1961(昭和36)年、独立美術協会会員推挙。1967(昭和42)年、渡欧。ナショナル・デ・ボザール展にてアソシエ賞を受賞。1977(昭和52)年より1990(平成2)年まで女子美術短期大学非常勤講師を務める。1996(平成8)年、独立美術協会功労賞受賞。1999(平成11)年、茅ヶ崎市美術館企画展「土井俊泰の画業」が開催される。2012(平成24)年1月10日、逝去。

 

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