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今月の1点 Monthly Pickup 3月

《 虚A 》 土井俊泰 (どい・としやす 1918~2012)

(読み方:きょA)
1965(昭和40)年 油彩・キャンバス 縦136.0×横149.0(cm) 《茅ヶ崎市美術館蔵》

 

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画面の中央に描かれた水色の丸い形。にじむような色あいが透明感を放ち、油彩画にも関わらず水彩画のようにも見える画面である。

「色と色、形と形の全体の関係をとことん重視し、色の美しさを探す」という作家の言葉の通り、色と形が織りなす空間の広がりが特徴的な抽象画である。

土井は、1918年、静岡県田方郡伊東町(現・伊東市)に四人兄弟の末っ子として生まれ、10代で画家を志す。20代では、兵隊として召集されるも、上海の陸軍病院で肺結核と診断され、帰国後も療養生活を送る。そして、31歳の時、人生の師である独立美術協会会員の菅野圭介と出会い、師事する。

1951年に独立展に出品し、それ以降、作品は毎年入選し、1958年には、独立賞を受賞。翌々年には独立展最高賞を受賞している。抽象的な風景画を数多く描いている。

1967年、土井は渡欧しパリで一年間を過ごす。帰国後、画風はこれまでのものとは異なり、花や机などの静物画、幻想的な街並や花火をする人々など、具象的な絵画へと変化を遂げた。

渡欧した理由について、これまで描いてきた抽象画に迷いが生じたからともいわれており、渡欧する2年前に描かれた本作は、まさに迷いの中で描いた作品といえるのかもしれない。

鑑賞者からは、「これは、きっと海を描いたんだ」「てっぺんの三角は、えぼし岩だ」という感想をきく。身近に海があり、砂浜沿いには松が並び、海面から突き出ているものは「えぼし岩」という景色に親しみを持つこの地に住む我々にとって、この作品の水色の円形は、湖でもなく穴でもなく、豊かな水をたたえる海に見えるようだ。土井が何を意図して描いたかは定かではないが、我々の想像力を豊かに膨らませてくれる作品である。

 

(美術館 H.F)

 

 

<略歴 >

1918(大正7)年、現在の静岡県伊東市に生まれる。三島市の第一小学校高等科を卒業と同時に生家を出て、絵を独学で学ぶ。1949年には、独立美術協会の菅野圭介に出会い師事する。1958年独立賞受賞(翌々年、独立賞最高賞受賞)1959年に茅ヶ崎市十間坂にアトリエを新築し転居。1967年には渡欧しパリで一年間を過ごす。ナショナル・デ・ボザール展にてアソシエ賞を受賞。1996年、独立美術協会功労賞受賞。

 

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