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今月の1点 Monthly Pickup 1月

《 For your green eye(みどりの瞳) 》 島谷 晃 ( しまや・あきら 1943~2010 )

1993(平成5)年 アクリル・キャンバス 縦65.0×横65.0(cm) 《個人蔵》

 

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 見つめ続けていると魅入られそうな瞳をもつ美女。

 彼女の髪の毛に見えるのは柔らかそうな鳥の羽根です。その中に4羽のふくろう。よく見るとそのほかにも羽毛に紛れるように身を隠し、あわせて10羽の鳥が彼女をとり囲んでいます。
 さらに目をこらせば羽根の一枚一枚、ふくろうや鳥の頭部などに女性の顔が描き込まれています。これは羽根の一枚一枚がそれぞれ生命を宿していて、個々の生命によって鳥や人という生命体が構成されているという作者の思想が絵画化されたものなのです。
 きりりとした筆遣いによる女性のフェイスラインやブラウスの襟。その描線の美しさが作品全体に気品を与えています。
 色彩は茶色系統でまとめられていますが、その緻密で多様な階調が全体の立体感を際立たせています。

 作者は1976年から翌年にかけてオランダのアムステルダムに遊学したとき、ふたつの「宝」を手に入れます。ひとつは住んでいたアパートの向かいにあった動物園での生涯のモチーフとなる「ふくろう」との出会い。そしてもうひとつはアムステルダムの街の茶色のレンガから「色彩」を学んだことです。多くの色を使って描くのがよい絵だと考えていた島谷さんが、限られた色の幅の中から美をひきだす術(すべ)を手に入れたのです。

 もういちど作品を見てみましょう。
  さきほど10羽の鳥と書きましたが、この絵の主人公である美女は・・・人?それとも・・・

 この作品は企画展「―まぼろしの翼― 島谷晃展」(1月31日まで)に展示しています。
島谷さんの不思議な絵の中に分け入りたい方は、ぜひ虫眼鏡を手にご来館ください。

(美術館 N.Y)

<略歴 >

1943(昭和18)年7月1日、藤沢市片瀬に生まれる。小学生の頃から田澤茂[たざわ・しげる]が主宰する「どんぐり美術会」に通う。1963年、早稲田大学第一文学部文学科美術専修に入学。学内サークルの「美術研究会」に所属。1966年、夢土画廊(東京・銀座)にて個展開催。以降、個展多数。1975年、フランス・パリにてグループ展開催。以降、海外での作品発表多数。1976年、5月より翌年4月までオランダ、アムステルダムに留学。1978年、第1回現代童画会展にて佳作賞を受賞。1983年、宝生寺(茅ヶ崎・西久保)の壁画「孔雀明王図」が完成する。以降、西念寺(鎌倉・岩瀬)、勧行寺(鎌倉・腰越)、妙福寺(藤沢・打戻)ほかの壁画や天井画を多く手がける。1985年、宮沢賢治の童話に絵を添えた『おきなぐさ』を出版。カバー前袖の文章は澁澤龍彦。1988年、文化庁芸術家在外研修員、日米芸術家交換計画日本側派遣芸術家としてニューヨークにて研修。1996年、神奈川県民ホールギャラリーにて現代作家シリーズ‘96「島谷晃展 夢幻の世界・リアルな眼差し」が開催される。2001年、池田20世紀美術館(静岡・伊東)にて「島谷晃の世界 鳥になった画家」が開催される。2010(平成22)年5月21日、脳溢血のため逝去。2015年、茅ヶ崎市美術館にて企画展「―まぼろしの翼― 島谷晃展」が開催される。

 

 

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