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今月の1点 Monthly Pickup 8月

《漁船と街》 鶴田 猛(つるた・たけし 1923~2008) 

1982(昭和57)年 油彩・キャンバス 縦130.3×横162.2(㎝) 《茅ヶ崎市美術館蔵》

鶴田猛《漁船と街》 「汽車ポッポ」の画家で知られる鶴田猛の作品。彼の作品は、機関車や貨車、人力車、大八車といった車輪の付いたモチーフが多く登場します。画面を縦横無尽に駆け巡ったり、あるいは片隅に立ち止まり思考しているようにみえる姿は、まるで生きもののようでユーモラスです。
 そうした作品のなかで、この絵は漁船がメインに描かれています。水の上に浮かぶことなく、どしり、と居ます。同じ空間に幻想のように描かれているのは、異国の街並みの風景。
 1978年、画業に専念するため、前年に国鉄を退職した鶴田は、念願だったフランス、スペインなど欧州への遊学に出かけます。そこで目にしたもの―特に18・19世紀に建てられた寺院、石の彫像などの、古き街並みと建造物―に感動したと言います。
 鶴田作品のもうひとつの特徴といえば、イエローオーカーを主体とした色調です。この乾いた質感の中に瞑想するかのように佇む一隻の漁船は、まるで黄昏に昔日の外遊での旅情を思い浮かべ、余韻に浸る作者自身のように感じます。
 お元気でいらっしゃれば今年卒寿を迎えていた作者の面影を彷彿とさせるような一点です。

現在開催中の常設展「夏季収蔵作品展―15年の軌跡」(2013年8月31日まで)に展示されています。

(美術館 S.T ) 

<略歴 >

現在の茅ヶ崎市円蔵に生まれる。1938(昭和13)年、鉄道省に入る。1941(昭和16)年、旧満州(中国東北地区)の南満州鉄道(満鉄)に入る。敗戦後、同社の閉鎖と同時に中華民国政府留用となる。1947(昭和22)年、帰国後再び国鉄に入社する。小学生時代から水彩画を得意とし、機関士として働いていた満鉄時代には中国の風物景観のスケッチを描いた。国鉄に再入社後、本格的に油絵に取り組み、1957(昭和32)年、第3回一陽会展に初入選。以後、同展へ出品を継続する。1964(昭和39)年、会員推挙、1988(昭和63)年、委員就任。受賞歴は、1959(昭和34)年、青麦賞、1987(昭和62)年、野間賞。1988(昭和63)年、茅ヶ崎美術家協会会長就任(98年まで)。2002(平成14)年、茅ヶ崎市美術館企画展「汽車ポッポの詩―鶴田猛展」開催。2008(平成20)年9月、逝去。

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