クリックでよむアニメ絵本

この作品は、クリックする指先の動きによりストーリーが進む”アニメ絵本”です。見ることのできないお腹の中の赤ちゃんの様子が、身近な果物などの大きさ、重さに置き換えられ、親しみを感じられる作品になっています。砂を使って描かれた1枚1枚の絵に写真と文字も組み合わせ、この作品にはなんと約550枚の画像が使われています。膨大な手作業により、このように動いて見える作品がつくられていることが分かります。

そして、お気づきでしょうか?通常の絵本と異なり、この作品はページを戻ることができません。それは、赤ちゃんの命が10カ月の歳月をかけ育ち、成長をつづけた結果、いまの私たちが生まれ、この世に生きていることが表現されています。事実に基づいたストーリーとぬくもりのある絵でつくられた若見さんの作品を通じ、この時代を生きていく私たちの命の貴重さを、改めて感じていただけるでしょう。

「あなた」(2021)

作家よりコメント(作品に込めた想い)

こどもの皆さんに向けて

あなたがうまれるまでの、10か月のアニメーションです。
あかちゃんの、おなかの中でのセイチョウをソウゾウしやすいように、みぢかなものにたとえました。
あなたはいま、しんちょうはどれくらい?たいじゅうなんキロ?
とーっても大きくなりましたね!!
あなたがいのちをさずかったときは、すなひとつぶの大きさだったのです!

大人の皆さんに向けて

コロナ禍で核家族の多く繋がりが少ない社会の中で、若い世代へ向けての性教育の必要性を感じています。そして性教育に入る前の段階として「生命の尊さ」「自分や他人を大切にする」ことがとても重要だと思います。
自分は奇跡的な存在であること。世界でたったひとつの宝であることを感じてもらえたらと思います。

作家プロフィール

若見ありさ(アニメーション作家)

愛知県生まれ、東京在住のアニメーション作家。
主にコマ撮りの手法を用いたサンド(砂)アニメーションを得意とし、NHKやベネッセなどのコーナーアニメーションを担当する。また、赤ちゃんと出産祝いのプレゼントを題材に発表した作品「blessing」は世界7か国の映画祭で上映された。2015年、企画から総合監督まで務め、出産体験を描いた「Birth-つむぐいのち-」は、文化庁の助成対象に選ばれたほか数々の賞を受賞し、続く「Birth-おどるいのち-」「Birth-めぐるいのち-」も多くの映画祭で取り上げられ高い評価を得ている。また、美術館や児童館などにおいてもアニメーション制作を体験できるワークショップを開催し、なかでも0歳から参加ができるワークショップは各所で評判を呼んでいる。現在、東京造形大学特任教授として後進の育成にも取り組んでいる。
http://arisawakami.com/

作品の作り方ヒント

Q1. .この絵本をつくるために使ったコンピューターソフトやアプリを教えてください。

Dragon Fream(コマ撮りソフト)
Adobe Premiere(映像編集ソフト)
Adobe Photoshop(画像編集ソフト)

Q2.つくるときに難しかった点や工夫した点があれば教えてください。

ストーリーをつくる際に、胎児の成長と身近なものを何に例えるといいのか、助産師の足立木咲さんと案を出しあいながら試行錯誤しました。絵的にも良く、情報的にも正確なものになるように、そして、子どもたちを含め見てくれる幅広い年齢の人がイメージしやすいものになるように工夫しました。

Q3.このような作品を創りたい時に参考になる本やWEBサイトを教えてください。

絵本:「福音館の科学シリーズ 赤ちゃんのはなし」 文・絵:マリー・ホール・エッツ 訳:坪井郁美
WEB:「コマコマドリル」 http://komakomatai.com/

教育現場や保護者の皆様へ

昨今、教育現場においてプログラミング的思考を学ぶ授業が推奨されています※1。そこで、今回はコンピュータを使った新たな表現とその楽しみ方や身につけ方について、本事業のアドバイザーである日本工業大学准教授の小林桂子さんに3回にわたるコラムを執筆していただきました。ぜひ、あわせてご覧ください。

※1 プログラミング教育に関連する資料(文部科学省ホームページより)
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/1375607.htm