|  コラムNo1 |

特徴を見つけてみよう

2020年は、テレワークやオンライン授業など、コンピュータやタブレットを使用する機会が、これまでになく多かったのではないでしょうか。そして、そういった機会では、仕事をする・勉強をするだけでなく、自分の情報がどのように見えてどのように伝わるのかを意識する機会、つまり、作り手側・情報発信側のことを考える機会にもなっていたかと思います。このコラムでは、オンライン上の作品の鑑賞を通じて、デジタル技術の特徴を知り、その楽しみ方を見つけていただきたいと思っています。

さて、「クリックでよむアニメ絵本」はいかがでしたか?画面で読む本は「本」なのか?という疑問もありますね。仮に、画面で読む本を「ホン」と呼ぶことにし、ホンにはどんな特徴があるか、ちょっとだけ、大人も子どもも一緒に考えてみましょう。

いま、あなたのそばに何か本はあるでしょうか。あったら手に持って、ぱらぱらとめくってみてください。本それぞれに、大きさ、重さ、手触りや匂いを感じることができるでしょう。
それでは、ホンはどうでしょう?ホンには大きさや重さはなく、コンピュータやタブレットのような、その内容を表示する装置の特徴によって、大きさや重さなどが変わります。何百万文字の情報があるホンでも、重たくありません。ディスプレイのサイズに応じて、とっても大きく、または本とまったく同じサイズに表示することもできます。

本には文字や絵があって、それを読んで、心の中で音や声にしたり、映像にしたりして、自分だけの世界を想像して楽しめます。そして、自分の心の外の世界に音や映像を出すには、自分でやるか、別の装置の力を借りる必要があります。
ホンは、情報がデジタル化されているので、「文字」「絵」「音声」といった要素をひとまとまりに扱うことができます。作者が考えた具体的な映像や音を、「読む」ことと同時に楽しめます。また、書かれた内容を検索して知りたいことを見つけることも得意です。

ホンの特徴を少しだけ挙げてみました。本とホンの関係は、鏡のこちらと向こうのようなものです。現在、わたしたちが使っているコンピュータの基本の画面は、できるだけ少ない説明で操作方法を理解できるように、私たちの身の回りにあるものを「たとえ」として使っています。現実の世界とは違うコンピュータの世界をわかりやすくするために、この「たとえ」る方法がよく使われているのです。ホンは、誰でも知っている本の姿をもとにしていますが、デジタル化されていることによって、いろんな特徴を備えるようになりました。

ほかにもまだ特徴はあるので、子どもたちと一緒に、たくさん見つけてみましょう。見つけた特徴は紙に書いたりして、とっておきましょう。それを使うと、自分で新しい楽しみ方を作ることができます。
例えば、「大きく表示できる」特徴を使うと、大きな画面を使って、みんなで一緒に見る楽しみ方が作れます。また、「ネットにアクセスできれば誰でも同時に見ることができる」特徴を使えば、離れた場所にいる人にオンラインで読み聞かせることもできそうです。子どもたちはもっといいアイディアを見つけられると思います!

楽しみ方を作れたら、次はホンそのものを作ってみましょう。お話と絵があれば、ホンが作れます。絵が描けなくても、スマートフォンで撮影した写真を使う方法もありますね。同じ絵や写真でも、並べ方を変えて違うお話にするのも楽しそうです。
そうして作品ができたら、改めて、子どもたちと一緒に「クリックでよむアニメ絵本」を読んでみてください。きっと、最初に読んだときと、見えることや感じることが違うはずです。

小林桂子(日本工業大学 先進工学部情報メディア工学科 准教授)

比較的新しい芸術表現であるメディアアートを通じ、技術と社会との関係について研究している。展覧会の企画制作や、メディアテクノロジーを理解し体験できるワークショップを、展示や教育、医療の現場等で実施してきた。NPO法人理事、文化庁芸研究補佐員、日本芸術文化振興会基金部プログラムオフィサーを経て、2020年度より日本工業大学先進工学部情報メディア工学科准教授。

教育現場や保護者の皆様へ

昨今、教育現場においてプログラミング的思考を学ぶ授業が推奨されています※1。そこで、今回はコンピュータを使った新たな表現とその楽しみ方や身につけ方について、本事業のアドバイザーである日本工業大学准教授の小林桂子さんに3回にわたるコラムを執筆していただきました。ぜひ、あわせてご覧ください。

※1 プログラミング教育に関連する資料(文部科学省ホームページより)
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/1375607.htm